文 水沢謙一 再話
絵 梶山俊夫
発行 福音館書店
初版 1978/1/1
対象年齢 4歳から 自分で読むなら小学校初級向き
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 A

さんまいのおふだ のあらすじ・内容


昔、山のお寺に和尚さんと小僧が住んでいました。

ある日、小僧が山へ花をとりに行くと、道に迷ってしまい、日も暮れてきたため仕方なく偶然見つけた山小屋に泊めてもらいます。山小屋にはおばあさんが一人で住んでいました。

ところがそのおばあさんは実は鬼婆で、小僧を食べようとします。小僧は慌てて「便所に行かせて欲しい」と頼み、逃げないように腰に縄を結びつけられて便所に入ります。そうして小僧が困っているところに便所の神様が現れて三枚のお札を渡し、逃げるように言います。さて無事に逃げることができるでしょうか。

さんまいのおふだ の解説・感想


昔話中、屈指の名作


個人的には、日本の昔話の中でも屈指の名作だと思います。これは文句なしに面白いです。ハリウッドの良作エンターテイメント映画に匹敵すると言っても過言ではないと思います。

最初から最後まで面白さてんこ盛り


おばあさんの正体がわかってからの畳みかけるような怒涛の展開(ウチの子どもは怖がったり、ドキドキしたり、びっくりしたり)、そんな中でもユーモアのある場面もいくつかあって(ウチの子どもは大笑い)、最後は和尚さんの機知と落ち着きぶりがかっこいい(ウチの子どもは呆気にとられる)。細かいところまでホントによくできた話でどの場面も面白いので目が離せないんです。非常に密度の濃い作品なんです。

お札の威力は子ども心をくすぐる


三枚のお札というのが、言うなれば魔法の札です。目の前に大きな山や轟々と流れる大川を出現させたりできて、それで鬼婆の追跡を振り切ろうとするのです。スゲエ!この設定は私の中の子ども心をくすぐりました(笑)。中二病だと笑わば笑え、面白いものは面白いのです。子どももここはスゲエ!と思ってくれると思いますよ。

読む方もめちゃ楽しい


ドキドキの場面あり笑える場面ありで、それぞれの場面に合わせた読み方で面白さも倍増するでしょうから、是非声優ばりの演技で読んであげてください。子どもは食いついてきますよ~。そして読んでる方もめちゃくちゃ楽しいですよ~ノッてきますよ~。ただ怖がりのお子さんにはその点ちょっと加減が必要かも知れませんけどね。

おおらかな表現も面白い


ちょっと余談なんですけど、小僧がとりあえず便所に逃げ込む場面。鬼婆がまだかまだかと急かすのに対し「ぴーぴーのさかり」と返事します。私が覚えているパターンは「まーだまだびーちびち」というもの。どちらも要するにまだウンチが出てるところだから待ってくれとそういう意味です。私の知ってるパターンは別の絵本だったのか、それともアニメの日本昔話からなのかよく覚えていませんが、緊迫した場面なのになんともおおらかな表現があって面白いなと思います。

梶山俊夫さんの絵が一番


絵は、筆で書いた、昔風の、ヘタウマな感じ(梶山俊夫さん、失礼!)です。アニメーション風のキレイでかわいい絵で描かれた昔話絵本ってありますけど、ああいうのは私は嫌いです。お話の世界観、ぶち壊しです。やっぱり昔話はこういう味のある絵が一番だなと私は思います。でも鬼婆が襲ってくるところなんかかなり迫力がありますよ。

方言がちょっとわかりづらいかも


新潟の方言で書かれているのですが、ちょっと子どもにはわかりにくいよなぁと思う表現が結構あります。でもその方言がまた味わいと雰囲気があっていい面もあるんですよね。私は新潟出身なのでほとんど問題ありませんけど子どもはわかりづらいだろうと思って、作者さんには申し訳ありませんが、時々必要に応じて言い回しを変えて、子どもにわかりやすいように読んであげました。その点、『さんまいのおふだ』は他にも絵本が出ていますから、わかりやすいのがあればそちらを選択するのもいいでしょう。でも私はこの絵が好きなのと、昔話らしい文章に魅力を感じました。

私の好みで勝手に決めた(笑)三大傑作昔話。本作の他に『おむすびころりん』『かさじぞう』もご紹介しています。是非御覧ください。

本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険