文 新美南吉
絵 黒井健
発行 偕成社
初版 1988/3/
対象年齢 5歳から
文字の量 やや多め~かなり多め
ページ数 32
発行部数 不明。1993/2時点で54刷
オススメ度 B

 

概要
雪の冷たさで赤くなった子狐の手。母狐は、町で毛糸の手袋を買ってやろうと思い立ちます。

そしてその夜、子狐の片方の手を人間の手に変え、お金を持たせ、狐だとばれないように「人間の手の方だけを見せるんだよ。」と言い含め、子狐だけで人間の町へ行かせます。

子狐は無事に手袋を買って戻ってこれるのでしょうか。

 

感想
同じ新美南吉さんと黒井健さんの『ごんぎつね』もこのブログでご紹介していますが、そのような悲劇的なお話ではありませんので、少し安心して読んでいただけると思います。かわいい子狐の行動が微笑ましいです。

狐の親子の会話、人間の親子の会話、いずれもお母さんの語り口がとても優しくて、子を想う気持ちにあふれています。

途中子狐がちょっと失敗しちゃうんですね。そこのところで、ウチの子どもは「大丈夫かなぁ」ってすごく心配してました。世間をまだ知らず好奇心旺盛な子狐の行動にハラハラさせられたりする冒険のお話でもあります。

元々は1943年に発表された短編で、それを絵本化したものがこの本です。文章がとてもきれいな日本語で綴られています。きれいと言っても華美な特別な言葉を使っているのではなく、わかりやすい表現ばかりです。でも読んでみると、とても気持ちいいのです。子どもが読む、あるいは読んでもらうことを前提に、丁寧に丁寧に編んでくださったのだな、という気がしてきます。

少し文字数は多いですが、内容がわかりやすいので、4歳位でも大丈夫かと思います。でもウチの4歳の子には多少補足説明が必要なところもあったので、一応5歳からとしました。

黒井健さんの絵は、もうこの絵しか考えられないと思ってしまう位、優しく温かく美しいこのお話にマッチしています。