文 新美南吉
絵 黒井健
発行 偕成社
初版 1986/9/
対象年齢 8歳から
文字の量 やや多め~かなり多め
ページ数 36
発行部数 不明。1994/9時点で66刷
オススメ度 A
概要
一人ぼっちのきつねのごんは、ある日兵十の仕掛けた罠からウナギを盗みます。
ほんのいたずら心だったのですが、実は罠を仕掛けた兵十が病の母に食べさせようとしたもので、母はその後死んでしまったことを後で知ります。ごんは兵十につぐないをしようとしますが…
お互いを理解し合えないまま、お話は思いがけない結末へと導かれます。
感想
何とも切ないお話です。リアルの人間社会にもある悲しい現実を含んでいます。安易な行動は、悪意がなくても人を深く傷つけてしまうことがあること。誠意を持っていても理解されないことがあること。人はそれぞれ色んな背景を持って生きていて、その事をお互いに殆ど知らないこと。などなど。
こんな、いい悪いだけで片付けられない世界の存在、罪を犯してしまう弱き人間の姿など、こどもはどんな風に受け止めるでしょうか。全部が全部までわからないかも知れません。ごんぎつねはこうすれば良かったんだよーなんて現実解を模索するかも知れません。どういう風に受け止めようとも、こんな深い話もこどもにはいい刺激になるんじゃないかなと思います。
大人も含めて、読む人によって色んな受け取り方ができるような気がします。泣いちゃう大人もいるでしょう。
元々は1932年に発表された短編で、それが絵本化されたものがこの本です。新美南吉さん特有のとても美しい日本語で綴られています。
文はかなり多い方ですし、恐らく子どもは知らないであろう言葉も時々出てきます。(知らない言葉が出てくるから、それで覚えられるのだとも思いますが…。)一応8歳からとしました。小学生だと教科書に載ってる可能性もありますね。
黒井健さんの美しい絵が、この悲しく愚かな話を優しく包み込んでいるようです。ごんぎつねは他にもいくつか絵本が出ていますね。他のもチラッと見てはみましたが、この絵が一番いいと私は思います。
同じ新美南吉さんと黒井健さんの「手ぶくろを買いに」もこのブログで紹介しています。
こちらはとても優しく温かなお話です。
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