文 なかのひろたか
絵 同上
レタリング なかのまさたか
発行 福音館書店
初版 1977/4/
対象年齢 2歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 27
発行部数 133万部(2014時点)ミリオンぶっく
オススメ度 B

ぞうくんのさんぽ のあらすじ・内容


いいお天気の日、ぞうくんが散歩にでかけました。

途中でかばくんに出会いました。一緒に行こうと誘うと「背中に乗せてくれるならいいよ」と言うので、かばくんを背中に乗せてあげます。

しばらく行くとわにくんに出会いました。また散歩に誘うとやはり「背中に乗せてよ」と言うので、わにくんをかばくんの上に乗せてあげます。かなり重くなってきました。「うん、うん、おもいな」

今度はかめくんに出会います。散歩に誘うと「ぼくも乗せてよ」と言うので、さらにわにくんの上に乗せます。「うん、うん、おもいぞ」

さすがに重くなってぞうくんはふらついてバランスを崩し、とうとうみんな揃ってお池にドボーン。

でもお天気がいいからみんなで水遊びしてご機嫌です。

ぞうくんのさんぽ の解説・感想


表紙を見てみてください。のほほんとした雰囲気のデフォルメされた動物たちがかわいいです。見た目だけでなく、行動ものんびりしてて何だか癒されます。お話の世界も、ほのぼのしてて平和そのもの。樹木の表現も写実的でなく抽象化されたようなデザインになっていてこれまた世界観に合っています。

でもそんな平和な世界の中にちょっとしたハプニングがあって、見どころになります。お池に落ちるシーンは、ストップモーションのような描き方で迫力がありますね。水しぶきもすごい。ここはまさにクライマックスです。こういう豪快なのは子どもが喜ぶでしょう。そしてその直後、今度は池に落ちてじっと固まってしまっている動物たち。豪快なシーンから一転、このとぼけた(本人は一所懸命なんでしょうけど)動物たちのかわいい表情がまたいいんです。

この本はなかのまさたかさんがレタリングをやられています。レタリングというのは文字のデザインの事です。絵本ではあんまりクレジットにレタリングって出てこないので珍しいですよね。で、表紙のタイトルや池に落ちるところの「どっぼーん」という擬音語なんかは手で描かれているような気がします。そしてよくよく見ると、本文の方も同じ文字でもなんか微妙にフォントが違うんですよね。まさか一文字一文字手書きされたのかな。もしそうならすごく手がかかってますよね。絵の方にも空中に細かい点がいっぱい書かれています。暑さの表現かな。私は勝手に”マイナスイオン”だと思ってるんですけど(笑)。作品全体に手作り感がすごく感じられて、温かみがあるんですよね。

繰り返しのあるシンプルな話なので小さい子でもわかりやすくて、それでいて起承転結のストーリーもしっかりある。2歳前後の子どもにジャストフィットの内容だと思います。

因みに、こちらの福音館書店のブログに著者のなかのひろたかさんのインタビューが載っています。本書を作った当時の事を振り返っていて興味深いですよ。→ <作家インタビュー>『ぞうくんのさんぽ』が生まれた日  なかのひろたか

このお話が気に入ったら、同じようなストーリーで『ガンピーさんのふなあそび』という作品もありますよ。こちらは動物の数もぐっと多くなります。

最後のちょっとしたわずかなプラスアルファでそれまでの均衡がくずれるというのが、このお話の魅力の一つでもあります。亀なんてカバやワニに比べたらほんの小さいのに、それがキッカケになってしまうというところが面白いわけです。そういう絵本は他にもありますよ。 → 『おおきなかぶ