文 大塚勇三(再話:モンゴル民話)
絵 赤羽末吉
発行 福音館書店
初版 1967/10/1
対象年齢 4歳から 自分で読むなら小学校中級向き
文字の量 やや少なめ
ページ数 48
発行部数 143万部(2019時点)ミリオンぶっく
オススメ度 B

スーホの白い馬 のあらすじ・内容


働き者の貧しい羊飼いスーホは、ある日生まれたばかりの白い子馬を拾ってきます。スーホが大事に育てたので、子馬は美しく立派な白馬へと成長します。

ある晩スーホは馬のいななきで目覚めます。駆けつけると白馬がオオカミから羊を守って戦っているのでした。オオカミを退けてからスーホは心から白馬に感謝します。そうしてお互いを愛し信頼する大切な存在になるのです。

ある時スーホと白馬は、殿様主催の競馬に出場しました。1位になった者には殿様の娘と結婚させるといいます。結果スーホは見事に1位となります。しかし、殿様はスーホが貧しい羊飼いであることがわかると結婚の約束を反故にした上に、乱暴してひどいケガをさせて、白馬さえも奪ってしまいます。

スーホが白馬のことを心配しているその一方で、ある日殿様はみなに見せびらかそうと白馬に乗ろうとします。ところが、白馬はこれを振り落とし、逃げ出してしまいます。殿様は殺してしまえと命令し白馬に向かって矢が放たれます。

スーホの白い馬 の解説・感想


とても悲しいお話です。悲しいだけでなく、子どもに媚びない絵本です。ウチで読むのは普段は楽しい絵本がほとんどなんですけどね。違う角度からの刺激も与えてみたくて、こういう話もたまには子どもに読んであげたいなと思いました。他人の心の痛みを感じ取れるようになってくれたら。理不尽に対する憤りを感じてくれたら。

そして何よりも深い愛情と心からの信頼、尊敬という人と人との強い結びつきがどういうものかを感じてもらえたらと思いました。これがあるから悲しい話であっても救いがあるし、ただ薄っぺらい可哀想で終わらない物語の力強さがあるのだと思います。

4歳の子どもに実際読んでみましたが、反応は今ひとつ。悲しい話を読んであげるのは初めてなのでとまどったかな。時々子どもにはわからないであろう言葉が出てくるので、もう少し噛み砕いて聞かせてあげればよかったかな、とも思います。無理強いするつもりはありませんけど、後でまた読んであげると興味を示す事もあるので、頃合いを見てまた読んでみるかも知れません。絵本の背表紙にも対象年齢4歳からとは書かれているんですけど、そんなに急いで見せる必要はないと思いますよ。

赤羽末吉さんの絵が素晴らしく、この話にぴったりです。素朴でいながら、とても力のある絵です。この絵本は元々大きめの判型で横長の形なのですが、すべての絵がそれをさらに見開き2ページに渡って横に長~く大きく描かれています。だから地平線が長い!茫洋としたモンゴルの草原が印象的です。360度地平線が見えるほど視界が広いって、日本人の私からすると何とも言えない寂しさのようなものを感じます。そしてそれほどに大きな自然を舞台にして殿様はなんと愚かな事をやっているなとも思います。この物語は教科書にも載ったことがあるそうですけど、さすがにこの絵は使われてはいないでしょう。教科書でこの話を知っているとしても、是非ともこの絵本で見ることをおすすめします。

ご参考まで、こちらの記事で、赤羽末吉さんの絵本に対する強い思いの一端を知ることができます。子どもに媚びないという事は、子どもには本物を見せなければならないという信念から来ているようです。

その後のお話の続きです。白馬はいくつもの矢が体に刺さりながらもスーホの元に帰りつきますが、手当の甲斐なくまもなく死んでしまいます。その後、夢の中に現れた白馬が自分の体を用いて楽器を作ってほしいと言います。そうすればずっと一緒にいられるからと。スーホは楽器を作ります。これが馬頭琴です。そしてどこへ行くにもそれを持っていき、弾くのです。そうすると白馬との思い出が蘇り、そばに白馬がいるような気がしてくるのです。

モンゴルの楽器馬頭琴の由来とも言われるお話です。(真実かどうかはわかりませんが。)馬頭琴の音色を聞いてみたくなりyoutubeで調べてみたらやはりありましたよ。コメントに本書の事も書かれていました。



因みに私は未見なのですが、アニメーションにもなったことがあるみたいですよ。

大人が読んでもいい本だと思います。因みにこの本に興味を持った大人の方にはこんな本も面白いかも知れません。