文 西内みなみ
絵 堀内誠一
発行 福音館書店
初版 1965/5/1
対象年齢 4歳から 自分で読むなら小学校初級むき
文字の量 やや少なめ~やや多め
ページ数 28
発行部数 220万部(2014時点)ミリオンぶっく
オススメ度 A
ぐるんぱのようちえん のあらすじ・内容
ゾウのぐるんぱはずっとひとりぼっちで暮らしてきました。だらしなく汚れていて、また寂しい思いをしていて時々涙を流しています。見かねた他のゾウ達のすすめで仕事をすることになります。ゾウ達はキレイにぐるんぱを洗って送り出してくれました。
最初に勤めたのはビスケット屋さん。張り切って1個1万円の特大ビスケットを作りますが、あんまり大きくて高いので買う人はいません。その特大ビスケットをもらって、ぐるんぱはクビになってしまいます。
次はお皿作りの工房。ここでも張り切って池のような大きなお皿を作りますが、こんな大きさでは使いみちがありません。お皿をもらってクビになりました。
こうして靴の工房、ピアノ工場、自動車工場と渡り歩いて仕事をがんばりますが、すべて作るものが大きすぎて、それをもらってクビになってしまいました。
仕事での失敗作である大きなビスケットや大きなお皿などを抱えてしょんぼりしているぐるんぱは12人も子どもを持つお母さんに出会います。そのお母さんは何しろ12人も子どもがいるので洗濯だけでも大変です。「ちょっと子どもと遊んでやって欲しい」とぐるんぱに頼みます。
ぐるんぱのようちえん の解説・感想
ダブルミリオンを記録するロングセラーの定番絵本です。
その後のお話の展開を説明しないと、この絵本の良さが伝わらないと思うので、続きをご紹介します。預かった子ども達にピアノを弾いて歌を歌ってあげていると、さらに他の子ども達も集まってきました。ぐるんぱは幼稚園を開くことにしました。過去の仕事の失敗作もそして自分の体もうまく活かした幼稚園ができました。ぐるんぱはもう寂しくありませんでした。
なんと言っても最後のページが一番の魅力
もうね、最後のページを見れば、そりゃ子どもが喜びますよ。ゾウさんが幼稚園やってるんですよ。しかも大きな靴でのかくれんぼやらお皿のプールやらぐるんぱのお鼻で滑り台とダイナミックな楽しい遊びもいっぱい。幼稚園と言うよりも遊園地のようです。どこで遊びたい?って子どもと話し合ってもいいですね。これは夢があります。ぐるんぱの幼稚園に行きたくなってしまうことでしょう。ウチの4歳の子も気に入ってくれました。
仕事の種類もいくつか出てきますから、どんなお仕事がやりたいかなって読後に親子で話し合うのも楽しいでしょう。当初のぐるんぱの仕事での失敗ってとても夢のある失敗です。失敗と言っても作るものすべてがゾウさんサイズになっちゃったってだけですからね。豪快なもの、大きいものは子どもにウケますね。特大ビスケットなんか特に。
これから成長していく子ども達へ
今までの失敗は全て無駄じゃなかった、このためだったんだというラスト。大きなビスケットや大きなお皿などがここで役に立つんですね。大人が見るとそれはよくわかります。でも子どもがそこに注目する事はほとんどないでしょう。子どもにしてみたらやっぱりこの本の魅力は夢があるところなのでしょう。こんな幼稚園があったらいいもんね。しかししかし、子どもにはまだよくわからないとしても、この絵本はこれから色んな経験をして(時には辛いこともあるでしょう、挫折もあるでしょう)大きくなっていく子ども達への失敗のすすめであり応援歌なんじゃないかなという気がします。ぐるんぱの経験がほんの少しでも子どもの心に残っていたらと作者が願っているんじゃないかという気がします。対象年齢が4歳からですが、小学校に上がって今までにない経験や苦労をした後に読むのもまたいいのではないでしょうか。
孤独から抜け出すという面も
また、ぐるんぱは孤児なのかずっと一人で寂しさを抱えて暮らして来ました。それが最後には子ども達に囲まれてもう孤独ではなくなりました。ぐるんぱが作った幼稚園には、ぐるんぱのように一人ぼっちの子どももやってきます。そういう子ども達の寂しさも癒やされています。境遇は人それぞれでしょうが、読者の中に現実に寂しい思いをしている子どもがいるなら、その子にとっても希望が持てる絵本となったらいいなと思います。
繰り返しの文章が楽しい
新たに仕事に着きそして失敗するそのたびに同じ文章のパターンが繰り返されるという子どもの好きな『繰り返し』があります。ぐるんぱが失敗すると必ずそこの親方に「もうけっこう」と言われてクビになるのもその一例。こんな言葉遣いは子どもの普段の生活の中には出てこないでしょうから印象に残りそう。あと、ぐるんぱが失敗を重ねるたびにしょんぼりするそのしょんぼりの数が一つ一つ増えていくのも芸が細かくて面白いです。
数も楽しい
12人の子どもを持つお母さんのシーンでは、12人の子どもと12枚のシャツ、12枚のパンツに24の靴下と、文にも絵にもちゃんと描かれています。これを見た子どもは数というものを楽しいと感じるかも知れないですね。
なんとタイトルを書いたのは
表紙をめくると1ページ目には『ぐるんぱのようちえん』というタイトルが手書きで書かれたように掲げられています。そしてその下には小さく『これは ぐるんぱが かいた じ です』と説明書きが。これはまたサービス精神旺盛な!。読者の子どもはこれから始まる物語により一層期待が高まることでしょう。これ、鼻で書いたんですかね。想像してしまいます。
お風呂教育にもなるかな
お風呂嫌いの子どもへの教育になる要素もありますね。最初の頃のぐるんぱは汚くて臭くて、近くにいるゾウは臭いので鼻を上へ向けてるんです。それがみんなに洗ってもらった後は、見違えるように立派になります。説教臭くなく自然に清潔でいることの大切さを教えてくれています。
本書の一番最後の文章がこれです。
びすけっと、まだ たくさん のこっていますね。
何故最後にこの文章が入ってるのか自分にとってはちょっと謎でした。子どもって細かいところまでよく見てよく考えるから、ビスケットがなくなってしまう事を心配する読者もいるんですかね。もしそうなら、絵本を作る仕事って私が想像するよりももっとずっとすごく細かいところまで子どもの事を考えるんだなって思いました。余談ですけど。
堀内誠一さんらしい絵はかわいくて、色使いもカラフルで、楽しい雰囲気いっぱいなのです。
幼稚園に入る直前のお子さんに入園を楽しみにしてもらえるようにこの絵本を読んであげるのもいいんじゃないかと思いつきましたが、3歳だとどうかな?お話を理解して楽しめるかはちょっとお子さんにより個人差があるかも知れません。でも最後のページのみんながワイワイと遊んでる幼稚園の全景の絵さえ楽しめればそれでよしかなという気もしますね。
因みにかわいいぐるんぱは、ぬいぐるみも販売されているみたいです。この絵本が気に入ったお子さんに喜ばれそうです。