文 マレーク・ベロニカ
絵 同上
訳 とくながやすもと
発行 福音館書店
初版 1965/7/
対象年齢 4歳から 自分で読むなら小学校初級向き
文字の量 やや少なめ
ページ数 44
発行部数 不明
オススメ度 A
ラチとらいおん のあらすじ・内容
弱虫な男の子ラチ。犬が怖いし、暗い部屋も怖い、友達も怖くていつも仲間はずれ。
ある日、ラチは小さな赤いらいおんに出会います。らいおんはラチを強い男の子に変えることを約束します。
身体的にも精神的にも徐々に強くなっていくラチ。そしてある日、困っている友達を助けようとしたラチは…
ラチを勇気ある少年に成長させた、らいおんと過ごした束の間の日々を描いたお話です。
ラチとらいおん の解説・感想
冒頭でラチは『世界一の弱虫』と呼ばれています。(どんだけ弱虫なんでしょう。)そんな子が最後には勇気ある少年となって活躍するのです。男の子ならかっこいいヒーローになりたいという願望を持っている子は多いでしょう。そんな子にはきっと胸のすくようなお話じゃないでしょうか。
お話の内容は子どもにもわかりやすいです。それでいて読み物としてしっかり起承転結があって楽しめると思います。冒頭にいくつかの簡単な伏線が張ってあって物語を通して徐々に回収されていきます。凝った構成ですがこれもお話を理解しやすくする要素の一つになっています。44ページと多いようにも思えますが、全然長く感じません。これだけの内容をよくコンパクトにまとめたものだと思います。字数も少ないのにね。
ラチは飛行士になるのが夢です、でも弱虫の飛行士なんているでしょうか?という疑問が提示されます。そして最後には勇気を獲得したラチはきっと飛行士になれるでしょうと評されます。先程男の子ならかっこいいヒーローになりたいという願望を持っているかもと言いましたが、弱虫のお子さんでも例えば仮面ライダーになりたいとか夢を持っているかも知れません。でも弱虫の仮面ライダーなんている?なんて言われたらめちゃめちゃかっこ悪いわけです。自分も勇気を持ったかっこいい男になりたいわけです。男の子って単純ですから、この本が刺激になって弱虫が少し改善することもあるかも。男の子に限らず弱虫のお子さんにはちょっぴり勇気と希望を与えてくれる絵本になるかも知れませんよ。
らいおんがラチにさせることのまず最初は体操です。体を鍛えるということの表現なのでしょうけど大人から見るとこれでいいのか?という印象はあります(笑)。でもここでのらいおんは可愛いし、体操が楽しそうで、これはこれでこどもにはアリですね。でもこの体操、毎朝続けるということになっています。やっぱり修行ではあるのです。
ラスト近くらいおんとの別れの時がやってきます。ラチがまさに漫画のようにポロポロと涙を流すところがとても印象に残っています。少年が成長する物語っていいなぁ。読み終えた後には清々しさが残ります。ただ、小さい子向けですからね。全米が泣いた!みたいな感動作じゃありませんからあまり期待しすぎないでください。
話の筋は違いますが、ドラえもんの話の中でも屈指の名作『さよならドラえもん』を思い出しました。ラチとらいおんの関係はドラえもんとのび太の関係にもちょっと似ていますね。『さよならドラえもん』ではドラえもんが未来の世界へと帰らなければならなくなります。でも未だしっかりしないのび太くんが心配でドラえもんは悩んでしまいます。そんなドラえもんの気持ちを察したのび太は一念発起するのです。『ラチとらいおん』よりもちょっと大きい子向けになりますが、精神の成長という意味でより深く感動的な内容になっています。機会があればご覧いただければと思います。
絵も親しみやすい、漫画のようなタッチです。特にライオンはかわいいですよ。キャラクター商品もあるみたいです。
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