文 宮西達也
絵 同上
発行 学研マーケティング
初版 1999/11/23
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 41
発行部数 不明
オススメ度 A
パパはウルトラセブン のあらすじ・内容
お父さん(ウルトラセブン)と娘(ちっちゃくてスカートをはいたウルトラセブン)の間の日々の小さな出来事を通じて、普段こどもにはなかなかわからないであろうお父さんの心の中が描かれています。
10のエピソードが4コママンガのようにまとめられています。ほとんどが1ページ1コマになっています。実際は1エピソードあたり、4コマに限らず2コマから多くても6コマ位になっていて、いずれも短く簡潔にまとめられています。
『パパのおしえ』優しさが大切だといつもパパが言うという話。
『パパはうれしい』いつまでこの子とこんな風に一緒に過ごせるのかなと考えているパパの話。
『おちこむパパ』パパは怪獣たちに「お前なんか大嫌いだ」と言われても全然平気だけど…。
『パパはなやむ』パパは自分の子育てが本当に正しいのか悩みながらも子どもがまっすぐ育っていくことを願っているという話。
『あらそうパパ』パパはケンカが嫌いだけど、子育てをめぐって夫婦ゲンカをしてしまうこともあるという話。
『パパはゆるさない』パパは嘘を許さないという話。
『パパのありがとう』パパは感謝の気持を大切にする。それは子どもに対してもという話。
『パパのしあわせ』子どもが大きくなることに喜びを感じる話。
『とてもとてもうれしいパパ』ママのお腹に赤ちゃんがいる。パパは生まれてくるのが楽しみであるとともに、子どもがお姉さんになることも喜んでいるという話。
『パパはたたかう』パパは戦い続ける。時々辛いことや悲しいこともあるけど、それでも戦い続ける。それは守るべき人がいるからという話。
パパはウルトラセブン の解説・感想
宮西達也さんのウルトラマンシリーズの一冊。恐竜シリーズもそうだけど、作者はこういうの大好きなんでしょうね。見返し部分には怪獣や星人が12種類紹介されています。初期のウルトラマンやウルトラセブンに出てくる怪獣や星人は個性的でデザインもいいなあ。実はこの怪獣や星人が作中に適材適所で使われていたりもするのです。でもわかる人にはわかる程度で、多くの人にはあんまり関係はないんでしょうけど(汗)。(参考まで:例えばギエロン星獣などは正義とは何かと悩みながら戦うパパセブンの相手として登場しています。)
本作に登場する子どもが女の子ということで、女の子ならではのお話が少々あります。例えば「お父さんと結婚する」と娘に言われた話とか。なので、読み聞かせにも女の子に読んであげるのが共感しやすくて一番適しているかと思います。でももちろん男の子だって楽しめますよ。
子どものことで泣いたり、喜んだり、しみじみしたり、悩んだり、頑張ったり…かわいい一面や男らしい一面、いろんなお父さんの姿が出てきます。子どもの目にはお父さんはどんな風に映るのでしょうか。
ただ、お父さんは気恥ずかしくて読み聞かせしにくい部分あるかも知れません。宮西達也さんの作品はド直球を投げてくる事が多いんです。この絵本も例外ではありません。お父さんが普段口にはしないが心にしまっている本音がいっぱい書いてあるんですよね。例えばですね。こどもを叱っている裏で、本当にこのやり方でいいのか悩んでいる事。そしてその根っこはこどもをまっすぐに導いてあげたいという気持ちからである事。この本はお父さんと娘の話ですが、あえてお母さんが読んであげる方が若干は気恥ずかしさが薄まるだろうし、それもアリかなという気もします。
親の本音をこどもに知ってもらう事は、こどもにとっても得るものがあるのではないでしょうか。親の背中が子どもにとって最大の教育であると私は思います。しかし背中も万能ではないようにも思います。本来なら親と子の間でそういう会話をすればいいのでしょうが、そこまでなかなかできない人にはこの本が役立ってくれるかも。
巻頭にはこんな言葉が載っています。
ぼくがこどものころウルトラセブンはどんなにつらくても闘っていた。悲しみをのりこえて苦しさにまけないで闘っていた。ぼくは今、おとなになって闘っている。悲しいこと、苦しいことがある。泣きたいことだっていっぱいある。でも、それでも闘う。あのころのウルトラセブンとおなじように。それは、愛する人がいるから。
大人とは完成された人間という意味ではないし、世の中に唯一無二の正解などというものもない。みんな悩みながら生きていくけど、悩みながら生きていくことはけっして悪いもんでもない。悩みながらも頑張るウルトラセブンのお父さんの姿に、子どもはこんな事も自然に教わるかも知れません。
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