文 こんのひとみ
絵 いもとようこ
発行 金の星社
初版 2008
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

くまのこうちょうせんせい のあらすじ・内容


くまの校長先生は、毎朝こども達が登校してくるのを出迎え、大きな声であいさつを交わします。

ところがひつじ君はどうしても大きな声であいさつを返す事ができません。校長先生は優しくひつじ君の頭を撫でなから「勇気をだしてごらん」と応援します。

ところがそんなある日、校長先生が入院してしまいます。そして自分自身が大きな声で話すことができなくなってしまいます。校長先生は、大きな声を出せない事情もあり得る事を身をもって知ることになります。

ある日校長先生はひつじ君に謝ろうとしますが、まだ治っていない体であったためうずくまって動けなくなってしまいます。それを見たひつじ君は…

くまのこうちょうせんせい の解説・感想


この本は実在の校長先生を基に書かれたのだそうです。この本のテーマはあとがきに書かれたその実在の校長先生の言葉に集約されています。
「こどもはあかるく元気がいちばんと、大人はおもいこんでしまいます。でも本当は、こどもはちいさくてよわいものなのです。こどもたちのいたみをわかちあうのが、大人の役目だと思います」

大人はこどもに元気であることを求めがちですが、こういう視点も忘れてはいけないんでしょうね。大人にとってはそれを思い出させてくれる良書です。

作者のこんのひとみさんは、体の弱いお子さんのために自作の子守唄を作って歌っていたのがきっかけでシンガーソングライターになられた方なのだそうです。ご自身の経験があったからこそ、こういうお話を書けたのかも知れません。

こどもにとっても、いい本だと思いますよ。

人はそれぞれ、他の人からはわからない事情を抱えていることがあるという教訓が含まれています。ひつじ君にも大きい声が出せなくなった背景があったのです。(その事情はあまりにリアル過ぎてちょっとどうなのかな?と…正直ウチのこどもも戸惑っていましたが…。)教訓と言うと堅苦しい感じがしますが要するに、表に見えている事がすべてじゃないよ、という事に気づいてくれたら嬉しいと思います。

登場人物はいずれも優しい心を持った人達ばかりで、そのやりとりを読むとあたたかい気持ちになれます。

ストーリーは上記のあらすじの後にクライマックスが待っていて、最後はハッピーエンド。校長先生が倒れた時にひつじ君がどういう行動に出るかは勘のいい方なら想像できるでしょう。最後まで飽きずに楽しめるお話だと思います。

いもとようこさんのほんわか優しい絵柄は、この本のお話にピッタリですね。