文 アンソニー・ブラウン
絵 同上
訳 さくまゆみこ
発行 BL出版
初版 2012/7/10
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 24
発行部数 不明
オススメ度 B

くまさんのおたすけえんぴつ のあらすじ・内容


くまさんが森を散歩しています。

それを二人のハンターが見つけ、つかまえようとします。

まず一人のハンターがくまさんの正面から網で捕まえようと襲ってきます。

くまさんは慌てずに、持っていた鉛筆を使って地面近くになにやら書き始めました。

書いたのは、ロープでできた、足を引っ掛ける罠でした。罠が実物に具現化しハンターは足を取られて倒れてしまいます。くまさんは難を逃れました。

しかしもうひとりのハンターがくまさんの後ろから投げ縄を持って忍び寄ってきました。

数々のピンチをくまさんはしのいでいきます。くまさんは魔法の鉛筆を持っているのです…

くまさんのおたすけえんぴつ の解説・感想


魔法の鉛筆が欲しい!


魔法の鉛筆とは、空間に何か描くと描いたものが具現化される鉛筆です。例えば、のこぎりを描けば、のこぎりを手に入れることができ、それを使って檻を出ることができるのです。この鉛筆の不思議さ、楽しさがこのお話の主軸になります。ドラえもんの道具にでもありそう。夢がありますよね。子ども達も使ってみたいと思うでしょうね。自分ならどんなものを書きたいかなって想像して親子で話し合ってもいいですね。

ドキドキしたりホッとしたり


くまさんが魔法の鉛筆を使ってハンターの襲撃や罠から逃れるエピソードが全部で5回あります。いずれも、あっやばい!と思わせておいて、くまさんがあっと驚く&ユーモアのある方法で切り抜けてホッとする、というパターンです。最後はハンター達から完全に逃れてめでたしめでたしのハッピーエンドです。この最後の1回を除く前の4回については、くまさんが何やら書き始めたところが右ページに描かれるので、続きが楽しみなところでページを捲らなければ続きがわからないようになってるんですね。どうなるの~!?ってページをめくる前に盛り上がるし、今度はどうやって切り抜けるんだろうと想像してからページをめくって答えを見て楽しむということもできます。

くまさんのキャラも面白い


お話はくまさんとハンターの攻防なので読者の子どもはドキドキするかも知れませんが、当のくまさんには緊迫感はまったくありません。危機に際しても焦ったりすることなく、妙にマイペースで涼しい顔をしています。終始進行方向が右なので右を向いた横顔ばかりなのですが、作中2度ほどこちらを向いてニコリとする場面があります。多分よそ見をしていて、前方のハンターの罠に気づかないという事を表そうとしているのだろうと思うのですが、なんとなく読者に愛嬌を振りまく余裕を見せているようにも見えて面白いですね。

文章はほんのわずか


文章は1ページに1行程度。ほんの短いナレーションようなものだけです。小さい読者にもお話が理解しやすいようにシンプルに説明してくれます。それとドキドキしたりホッとしたりという読者の気持ちを盛り上げてくれるところもあります。親御さんも読み方を工夫して、お子さんを思い切りドキドキさせてあげたり、ホッとさせてあげたりしてくださいね。

背景にも注目


そして森を描いた背景は草木のデザインがとってもシュールでサイケデリックで独特です。色んな奇っ怪な植物が生い茂っていて森というよりも何がいるかわからないアマゾンのジャングルみたいです。細かいところまでよく見ると森の植物の葉っぱや花に在り得ないものが描かれています。隠し絵の趣向が盛り込まれているんですね。それらを見つけていくのもこの本の一つの楽しみです。お子さんが一つでもそれに気づいたなら、夢中で他のも探し回ることでしょう。

英語のタイトルは『BEAR HUNT』。ハンター達は終始くまさんにやられっぱなしでダメダメですから、ちょっと皮肉が効いたようにも思えるタイトルです。これも面白いですけどね。が、日本語だったらやっぱり『くまさんのおたすけえんぴつ』の方が内容に期待させられていいですね。訳者さん、グッジョブだと思います。

姉妹作もありますよ


本作には姉妹作と言えるような絵本が2つあるんです。本作が気に入ったらこちらもご覧になってみてください。

まずはこちら。『くまさんのまほうのえんぴつ』



基本的なアイデアは同じなんですけど、こちらは作者が『アンソニー・ブラウンとこどもたち』になっています。表紙を見てみると子どもが書いたような絵がありますね。実は子ども達とのコラボレーション作品になってるんですよ。

もう一つがこちら。『くまくんまちへいく』



こちらは訳者さんが違う人みたいです。もちろんくまさんが魔法の鉛筆を持っているところは共通です。この絵本は新品での入手が困難なようですね。

実は本書とまったく同じお話の絵本も違う訳者さんによって評論社から出ているんですね。その名も『クマくんのふしぎなエンピツ』。お話もまったく同じです。