
文 西村敏雄
絵 同上
発行 あかね書房
初版 2013/11/12
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B
くまくまパン のあらすじ・内容
幼馴染のくまさんとしろくまさんが一緒にパン屋を開店しました。とても美味しくて街中の評判になり、繁盛します。
ある日ワニのお客さんが「一番おすすめのパンはなんですか?」と尋ねます。甘いパンが得意なくまさんはあんパンを、辛いパンが得意なしろくまさんはカレーパンを主張しお互い譲りません。このケンカを発端としてくまさんとしろくまさんは仲直りできずにお店は何日も休業が続くことになってしまいます。
評判を聞いてきたカバの王様もお店が休みでパンが食べられずがっかり。でも事情を聞いた王様は一計を案じます。
カバの王様は「この店で一番美味しいパンを食べさせろ!」と大声でお店に向かって叫びます。くまさんとしろくまさんは慌てて支度して、それぞれあんパンとカレーパンを作ります。しかし王様は「あんパンは甘すぎる、カレーパンは辛すぎる、もっと美味しいパンを食べさせろ!」と怒り出します。くまさんとしろくまさんは困ってしまいました。
「王様はどんなパンが好きかな」「甘すぎず辛すぎず」二人は協力してパンを作ることにします。
くまくまパン の解説・感想
西村敏雄さんの絵本が醸し出すこのほのぼの感はいったいどこからくるのでしょうね。登場する動物達はみんな素朴でちょっととぼけた感じでユーモラス。すごく親しみやすいキャラクター達です。
動物たちが何種類も出てくるのは、動物が好きな子どもにはたまらないでしょうね。それがまたみんな表情がかわいいんです。主人公であるくまさんとしろくまさんはもちろんのこと、脇役達まで表情豊かに描かれているんですよ。個人的にはカバの王様が連れてる家来達の表情がツボでした(笑)
お話の展開はう~ん悪く言えばありきたりかも(汗)。正直、新作パンのロジックが若干強引な感じがしなくもないです。でも読者は子どもですからね。子ども目線で面白いかどうかが一番です。良く言えばスタンダードで王道ストーリーだと思います。くまさんとしろくまさんそれぞれの得意なところをミックスし、お互いに協力して仲直りして、王様も納得の新作パン(これこそが『くまくまパン』なのです!)が出来上がります。すべてが丸く収まるハッピーエンド。ケンカも仲直りも子どもの日常にはよくあるでしょうから感情移入しやすいかも知れませんし、ケンカというものを少し離れたところから客観的に見てみる面白い機会になるかも知れません。ケンカせずに仲良く協力すれば一人ではできなかった今までにないいいものができるよ、というメッセージも込められています。お子さんに安心して見せられる内容です。
この絵本の導入部がとにかく楽しい文章なんです。
くまの パンやで パピプペポ
パン、ピン、プン、ペン、ポン
どれ たべたい?
パン!
面白い言葉遊びが読者の子どもをいきなり『くまくまパン』ワールドに誘います。こういう言葉遊びはウチの子どもも大好き。作中にも時々楽しい擬音語・擬態語が出てきて雰囲気を盛り上げます。カバの王様の叫び声「ガボー!」はインパクト大!。そもそも『くまくまパン』というタイトルからして、語呂がよく、かわいくて、ワクワクさせる感じがありますよね。
パン屋さんのお話は子どもに好まれますね。身近ですし、美味しいですし。この絵本に描かれるパンの数々も美味しそうです。子どもに人気ありそうな菓子系パン3種と惣菜系パン3種が見開き2ページに渡ってドーンと描かれるページは、あれがいいこれがいいと読み聞かせ中に楽しい脱線おしゃべりを誘いそうです。(できれば『からすのパンやさん』みたいにもっと数多くの種類を描いてほしかったな。)パン屋さんの絵本を他にもご紹介していますよ。 → タグ『パン屋』
西村敏雄さんは元々インテリアとテキスタイルのデザイナーだったのだそうです。要するにカーテンとかカーペットとかのデザイン。そのお仕事でも絵本のお仕事でも、人が不快になる要素は外すということ、それからちょっとした個性を盛り込むという事を意識されているそうです。(こちらの記事参照。)なるほど、それが見ていて心地よく癒やされるような、そして一見して西村敏雄さんだとわかるような個性的な絵につながっているのでしょうかね。私は西村敏雄さんの描く絵が大好きです。色合い、キャラクターの表情・ポーズなどなど、すべてに愛情とユーモアが感じられ、ページの隅まで作り手の丁寧さと誠実さが行き渡っているようで、じっくり見てしまいます。既に表紙からしてもう実にいい味を出してるじゃありませんか。因みに私、この絵はずっと油彩だとばかり思っていたけど、ガッシュ絵具というものを使われているそうですね。他の西村敏雄さんの作品もご紹介しています。どの作品も西村タッチのほのぼのした絵が楽しめます。『西村敏雄』のタグからどうぞ。
この絵本には続編があります。気に入ったらこちらもどうぞご覧ください。


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