
文 ジョン・クラッセン
絵 同上
訳 長谷川義史
発行 クレヨンハウス
初版 2012/11/15
対象年齢 4歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 33
発行部数 不明
オススメ度 B
ちがうねん のあらすじ・内容
小さな魚が帽子をかぶっています。
「このぼうし ぼくのと ちがうねん。とってきてん。」
どうやらこれは大きな魚がかぶっていたのを盗んできたらしい。
多分大きな魚はまだ寝てるわ…もし起きても帽子がないことには気づかないわ…もし気づいても僕のことなんか怪しまないだろう…怪しんだとしても僕の行き先なんかわからないだろう…
小さな魚のそんな思惑はことごとく外れます。
小さな魚は海藻のジャングルへと逃げ込みますが…
ちがうねん の解説・感想
絵本版『罪と罰』はじっくり読むべし
絵本版『罪と罰』とでも言うべき内容を、わずかな文と暗い色調の絵で表現しています。文が少なく逆に絵はすごく大きいので想像が広がりやすいです。子どもにはさらっと読んでしまったけど(だってあまりに字が少なくて)、ゆっくり間をおきながら読み聞かせた方がよかったかも。あるいはこどもだけで静かに読んだ方がいいのかも知れません。
実は文はすべて小魚のセリフです。しかも独り言です。悪いことをしてそれを悔いるでもなく自分自身を欺き続ける独り言です。でも言ってることは単純なことなので、こどもでも十分理解できます。
想像力を掻き立てる
最後、大きな魚が小さい魚を追って海藻のジャングルへと入っていきます。そしてしばらくして大きな魚だけが帽子をかぶって出てきます。ジャングルの中で何があったのか、小さい魚はどうなったのか、あえて何も描かれません。それがまた想像を広げてくれます。
最高にマッチしてる大阪弁
セリフはすべて大阪弁に訳されています。これが妙にマッチしています。英語のタイトルが『THIS IS NOT MY HAT』なんですけど『ちがうねん』の方がずっといい。これは翻訳絵本の大成功例と言っていいと思います。本の帯にはこう書いてありました。
なにが ちがうねん。
とったら あかんやろ。
本文にはないコメントです。これを見て大阪弁ていいなってちょっと思ってしまいました。
シンプルなのに凄くリアル
絵の背景はすべて真っ黒。夜なのかそれとも光のあまり届かない深い海なのか。暗い海の底にいるかのような雰囲気が全編にわたって漂っています。海水自体は透明ということで絵には直接描かれていないのですが、冷たい海水の温度やぬめるような水の抵抗、水の中の音などがリアルに感じられるようです。画面の構成や色使いも(当たり前でしょうけど)うまいなあ。私はこの絵、好きです。
絵本史上初の快挙
本作はアメリカのコールデコット賞、イギリスのケイト・グリーナウェイ賞をダブルで受賞しています。これは史上初の快挙だそうです。
他にもコールデコット賞を受賞した作品を紹介しています。 → コールデコット賞