文 松谷みよ子
絵 瀬川康男
発行 ポプラ社
初版 1967/5/
対象年齢 6歳から
文字の量 やや少なめ~やや多め
ページ数 40(この内やまんばのにしきのお話は32ページ)
発行部数 不明
オススメ度 B
やまんばのにしき のあらすじ・内容
ある晩、強い風とともに村にやまんばの使いが現れこう告げます。「やまんばにこどもが生まれたから餅をついてこい。さもなくばみんな食い殺すぞ。」
村人は相談の上、みんなでお米を持ち寄って餅をつきました。しかし問題は誰が持っていくかです。協議の末、いつもいばっている暴れん坊二人に持って行かせることにしました。二人は内心ビビっているのですが、普段威張り散らしているので怖いとは言えません。道を知らないからとゴネ出します。そこへ70過ぎのおばあさんが、自分が一緒にいってやると申し出ます。
三人は出発しますが、途中大風が吹いて暴れん坊二人は飛ばされていなくなります。おばあさん一人では餅を運べません。しかし何とかしなければ村人達が食われていまいます。おばあさんはとりあえず単身山のてっぺん近くにいるはずのやまんばのところへ向かうことにします。
やまんばのにしき の解説・感想
教科書にも出ているお話だそうです。元は民話です。
短い中にも主要な登場人物の人間性が描かれ、エンターテイメントの要素も豊富で読み物として私も楽しめました。
人物の描写が面白い
若者二人は普段いばっている手前みんなの前で怖がるわけにもいかず虚勢を張って出かけていきますが、いざという時はからっきしです。それにひきかえおばあさんはいつも落ち着いていて賢くもあり、両者の対比がとても面白くまた示唆もあります。
豪快なやまんばの赤ちゃん
やまんばの赤ちゃんというのが豪快でこれがまた楽しいです。赤ちゃんなのにものすごいスピードで宙を飛び回り、ご飯もまともに食べ、一人であっという間にクマを仕留めてきたりするんですよ。スケールの大きい話や豪快なエピソードはこどもが喜びますね。
このやまんばは悪役ではない
やまんばと言うと悪役と相場が決まっていますが、ここで出てくるやまんばはそうでもないんです。「みんな食い殺すぞ」という言葉からして乱暴な気がしますが、どうやら先の使者は世間知らずのやまんばの赤ちゃん本人だったようで、やまんば自身は赤ちゃんが村人に迷惑をかけないか案じていたと言うのです。また家に変えるおばあさんに反物(これがやまんばのにしき。不思議な力がある)を土産として与えます。ラストのエピソードからしてもどうやら村の守り神的な存在でもあるようです。ですから当初人間たちは怖がってはいますが、全然怖い話ではありません。
密度の濃いストーリー
やまんばの使いが突如として嵐とともにやってくる物語の冒頭から最後の大団円まで、エピソード一つ一つが活き活きした情景として脳裏に浮かびます。こどもの心にも残るものがあると思います。民話というとこじんまりした印象を受けるかも知れません。実際限られた文章量ですからそうそう詳細まで描写はされませんが、でもこれをベースに映画にしても面白そうな気がする位の密度の濃いストーリーでした。
おまけの民話も
巻末の3ページに『うしかたとやまんば』という民話がおまけのように載っています。こちらは主人公を食べようと襲ってくる怖~いやまんばの話ですよ。
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