文 こいでやすこ
絵 同上
発行 福音館書店
初版 2001/1/
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B
おおさむこさむ のあらすじ・内容
雪の降る寒い日。きつねのきっこと、いたちのちいとにいは、おおばあちゃんに暖かいマントを作ってもらいました。3匹はそのマントを着てソリ遊びに行きたいと言います。おおばあちゃんは「こんな日はゆきぼうずが出るから」と反対しましたが、3匹がどうしてもと言うので、ゆきぼうずに出会ったら絶対に「寒い」と言わない事(言うとカチコチに凍らされてしまう)と注意して、温かいお茶を持たせて送り出しました。
3匹はソリ遊びをする内におおさむとこさむというかわいい二体の雪だるま達に出会い、彼らと一緒にソリ遊びを楽しみます。雪は止んで日が出て、元気に遊んで暑くなってきました。おおさむこさむはマフラーやマントを預かってくれました。そして暑い時はかき氷がいいと3匹に振る舞います。が、だんだんとおおさむこさむの様子が変になってきます。かき氷を食べるに従って体が大きくなってるみたい。暗くなってまた雪も降ってきました。もしかしたらおおさむこさむは、おおばあちゃんが言っていた怖い『ゆきぼうず』ではないかときっこは疑いますが…
おおさむこさむ の解説・感想
私も子どもも好きなきっこシリーズ
きつねのきっこシリーズの一作です。このシリーズはわかりやすくて起承転結のあるストーリーと躍動感のある絵、楽しげな雰囲気が一貫しています。こどもが大好きです。私も絵のタッチが素朴で温かみがあって好きなのです。
お話の前半はみんなでソリ遊びに出かけ、楽しげな和やかな雰囲気です。この辺はこのシリーズらしいんです。
後半はもうハラハラドキドキ
ところが後半は同シリーズの他の作品と毛色が違っていて、一転ハラハラドキドキです。これはきつねのきっこシリーズ史上最大のピンチです。やはりおおさむこさむはゆきぼうずでした。ゆきぼうずに襲われるところ、逃げ出すところの絵はかなり迫力ありますよ。ゆきぼうずの姿はそれほど怖い造形ではないですけど、大きくて迫力はあるので、怖がりのお子さんは念の為注意が必要かも。大丈夫なお子さんならこの辺はオーバー気味に声大きめのやや早口で読んであげたりしたらより楽しいかと思います。子どもは怖がって布団に潜りながらも、続きが知りたくて隙間からちゃんと見ています(笑)
しかし今回のきっこはとても勇敢でした。しっかりしたお姉さんぶりを発揮します。読者の子どもはかっこいいなと感じるかも知れませんよ。出がけのおおばあちゃんの注意と温かいお茶も後で活きてきます。さすが年の功です。ちいとにいは今回はまったくいいところがありませんでした。(男の子だろ、頑張れよ!笑)
でもホッと安心できる
やっとのことで逃げ帰った雪だらけの3匹(この描写が雪国の私にはすごくリアルに伝わります)に比して、おおばあちゃんがいる家の中は平和で暖か。あ~よかった~という気持ちにさせてくれてハッピーエンドです。
マント、知ってるかな
マントなんて今はなかなか見ることはないし、言葉さえ子どもは知らないでしょうね。現代では正義の味方さえもはやマントなんてつけないからなぁ。(古すぎ!)でもこれ見ると子どもはマントに憧れるかも知れないですね。ちいとにいはゆきぼうずにマントを取られちゃうんだけど、おおばあちゃんがまた新しいのを作ってくれます。裏表紙には3匹がマントをつけて見せ合う姿が描かれています。
マフラー姿がかわいい
あと、きっこ達のマフラーの巻き方がとってもかわいいです。首に巻くだけじゃなくて頭も覆ってる。耳の部分がチョコンと出っ張ってるのがかわいさを増します。調べたけどこういう巻き方は見つかりませんでした。試しに自分でやってみたけど、最初にマフラーの中央を頭に乗せた後、前首で交差するともう長さが足りなくなっちゃいます。後首で交差して前で結ぶと何とか似た形にはなります。すごく長いマフラーなら絵本通りにできるかな。
『おおさむこさむ』と言えば、わらべ唄がありますよね。
おおさむこさむ 山から小僧がやってきた なんと言ってやってきた 寒いと言ってやってきた
だったかな?うろ覚えなので間違ってるかも知れませんし、もうその後の続きも忘れてしまいましたが。たしか本書のような怖い内容ではなかったと思いますけど、作者のこいでやすこさんがこれを知らなかったとは思えません。このわらべ唄をベースにどんどんイメージを膨らませてお話を考えたのでしょうかね。
きつねのきっこのシリーズは他に春の『おなべおなべにえたかな?』秋の『やまこえのこえかわこえて』をご紹介しています。すべてオススメ。おなべおなべを本書より先にご覧になった方は、本書の絵を隅々まで見ていると嬉しい発見がありますよ。
きつねのきっこシリーズの他に、同じこいでやすこさんの3匹のねずみのシリーズもおすすめです。 → 『とんとんとめてくださいな』『ゆきのひのゆうびんやさん』
因みにですが…同じように物の怪から逃げるお話に『さんまいのおふだ』があります。これは私のお気に入り。ハラハラドキドキが好きな方はこちらもぜひどうぞ。
その他にもハラハラドキドキのお話をご紹介していますよ。 → 『ハラハラドキドキ』
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