文 谷川俊太郎(詩)
絵 塚本やすし
発行 佼成出版社
初版 2014/4/13
対象年齢 5歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B
しんでくれた のあらすじ・内容
(最初に牛の絵。)
牛が死んでくれた。ぼくのために。
ハンバーグになった。(ハンバーグの絵。)
ありがとう、牛。
牛だけじゃない、豚、ニワトリ、魚、貝もいっぱい死んでくれてる。
他の生き物を食べることで自分は生きているという事実を、暗くなることなく、傲慢になることもなく、こども(男の子)の視点でまっすぐに受け止めた詩に絵をつけた本です。
男の子の思索の過程が描かれており、ストーリーのある物語ではありません。
しんでくれた の解説・感想
食育の本でもあり、命・生・死を考える本でもあります。
命は本来他の生命を生贄にして光り輝くもの
自分が他の生き物の命をいただいているという事実を認識して暗くなるような方向ではありません。命は本来他の命を生贄にして光り輝くものであるという事を忘れずに、いただいた命の分も生きようという捉え方です。
自分は食物連鎖の中に入らないのか
すべての生き物が他の生き物を食べて生きるのなら、自分はその連鎖の中に入らないのか?。途中でそういう風に思索の方向が変わります。自分を食べるものがいないから、自分は他の生き物のために死んでやれません。そしてそれにもし自分が死んだら?という想像へと展開していきます。当然家族は悲しみます。そんな想像をしてみるのもこどもにとって無駄ではないでしょう。
ぼくは死んでくれた生き物の分も生きる
そういった事実認識や想像を経て、最後に男の子は自分の意志で「ぼくは死んでくれた生き物の分も生きる」という決心に至るのです。
子ども向けとして思索の範囲は限定されている
大人ならもっと深くもっと広く議論しようと思えばいくらでも広げられるテーマだと思いますが、この絵本では上記の内容にとどまっています。例えば牛が命を落とす時に伴うであろう苦痛や凄惨さについては描かれていません。牛が死ぬ場面では大人なら若干血を連想させるだろうというような抽象的な絵が描かれるにとどまっています。死については、命を落とした動物たちが暗い背景の中に暗く描かれた見開き2ページの絵が死を暗示しているにとどまっています。ベジタリアンやヴィーガンに関しても語られていません。あまりテーマを重くしてしまっては子どもは抱えきれないでしょうから、適切な範囲なのだろうなと思います。食べ物が命によって作られるということ。食べるということは命をいただくということ。『いただきます』という言葉の意味を知り、自分の『生』をより大切にしようというメッセージに注力しています。
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