文 こいでやすこ
絵 同上
発行 福音館書店
初版 1992/9/1
対象年齢 3歳から 自分で読むなら小学校初級向き
文字の量 やや少なめ
ページ数 28
発行部数 不明
オススメ度 B
やまこえのこえかわこえて のあらすじ・内容
きつねのきっこが「こわくない こわくない」と自分におまじないをかけています。なぜかと言うと、一人で夜遅い時間に麓の豆腐屋さんへ油揚げを100枚買いに出かけるのです。
まずは山を越えます。そこで一人で買い物に行くきっこを見たお月さまがお供についてきてくれる事になりました。
次は野を越えます。ふくろうのろくすけがきっこを見かけ、一緒についてきてくれる事になりました。
お次は川を越えます。ここでもイタチの兄弟が一緒に来てくれることになりました。
お豆腐屋さんに着きました。お豆腐屋さんはまだ暗い内からお仕事を始めているのです。おまけと合わせて110枚の油揚げをもらって、お代はキノコと栗で払います。イタチが魚も添えてくれました。
さて帰り道。まずは川を越えます。ところが川岸で誰かが「こわいぞー こわいぞー あぶらげ ぜんぶ おいていけ!」と言いました。そこでお月さまがピカッと光を当てるとそいつは逃げていきました。
次は野を越えます。また怪しい影が現れました。
やまこえのこえかわこえて の解説・感想
短い中に面白さてんこ盛り
私は同じシリーズの作品を複数紹介することが少ないのですが、このシリーズはもうこれで3作目です。どれも良質な作品なので放っておけないのです。本作もストーリーからディテールまでこどもが喜びそうな要素が詰まっています。善意にあふれた平和な雰囲気の中にもちょっとした冒険の要素もあったりして物語の楽しさも味わえます。ドキドキしたり笑ったりホッとしたり美味しそうだったり楽しそうだったり、とにかく短い中に面白さてんこ盛りのこの作品をお楽しみいただければと思います。
ドキドキの冒険も
基本的には和やかなお話ですが、夜のお買い物となればきっこにとっても読者の子どもにとってもちょっと怖いでしょうしドキドキの冒険でもあります。でもお供達が心強いですし、最初にきっこが怖くないというおまじないをしているのも、読者の子どもに若干安心を与えてくれるかも知れません。さて買い物の帰り道には怪しい影が油揚げを狙います。三度出現しますが、お供のみんなが協力してこれを撃退します。この影、一見怖そうなのですが、出てくるたびに何故か要求が小さくなっていくんですね。最初は全部置いていけと言っていたのが、次は半分で、その次はおまけの10枚だけ置いて行けと(笑)。妙に弱気な奴で憎めません。因みにイタチが影を撃退する攻撃方法は子どもにはバカウケの可能性大のアレです。これには影も堪らんと逃げ出したことでしょうね。
珍しく人間も登場
お豆腐屋さんは人間のお店なんですよ。きっこのシリーズに人間が出てくるとは珍しい。お豆腐屋さんは毎年この時期に買いに来るらしいきっこの事を待っててくれました。オマケもくれるし。なんか人間とのちょっとした触れ合いが微笑ましいです。ところできっこがお金の代わりに渡したキノコってもしかしてあの高級食材!?
料理のシーンも楽しそう
お買い物の冒険の後は、これもふくろうといたちが手伝ってくれて油揚げを使って料理をします。これだけの油揚げを使って何を作るかは絵本を見てのお楽しみ。これは好きな子が多いんじゃないかな。お母さんは多分お子さんにこの料理をリクエストされる事になるでしょうね。そして楽しそうなだけじゃなくてみんな一生懸命働いているのもとてもいいと思います。トム・ソーヤーじゃないけど、誰かが何か一生懸命やってるところを見ると、何故かそれが面白そうに見えてきます。読者の子ども達も料理をしてみたくなるかも知れません。
すべての謎が解ける
最後の秋祭りのシーンは山の動物たちがいっぱい出てきてとても楽しそう。油揚げを狙った影は一体誰だったのか、そして何故きっこはこれだけ大量の油揚げを買ったのか、最後にすべてが明かされて気持ちよくお話は終ります。
絵を楽しんでください
動物がいっぱい出てきます。そしてこの動物たちはほとんどが子どもの設定のようです。絵をよーく見てると表情や仕草からその場面場面の子どもらしい気持ちが伝わってきてとても微笑ましいです。この辺はこいでやすこさんの作品に共通する特徴です。あとこいでやすこさんの絵にはよーく見ると細かいところでちょっとした仕掛けが含まれてることがあるんです。読者の子どもが隅々まで絵をよーく見てることを知ってるんでしょうね。例えば後に影となる犯人が実は最初からずっと絵の中にちょこんと現れています。これは絵さがしとしても楽しめそうですね。お月さまとふくろうは夜型なので、明るくなると眠そうなのも面白いです。あと、秋祭りにはよーく見るとあの人達も遊びに来たみたい。是非探してみてください。
名作きつねのきっこシリーズは、秋の本作の他にも、春の『おなべおなべにえたかな?』、冬の『おおさむこさむ』をご紹介しています。
私も大好きなこいでやすこさんの作品も色々ご紹介してますよ。 → タグ『こいでやすこ』
本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険』
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