文 松谷みよ子
絵 瀬川康男
発行 童心社
初版 1967/4/15
対象年齢 0歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 20
発行部数 179万部(2014時点)ミリオンぶっく
オススメ度 B

いいおかお のあらすじ・内容


ふうちゃんが一人でいいお顔をしていると、そこへ「いいお顔見せて」とネコがやってきました。そしてネコも真似してふうちゃんの隣でいいお顔をします。

次に「いいお顔見せて」とイヌがやってきました。イヌも真似っこしてネコの隣でいいお顔します。

その次にはゾウがやってきました。「僕だっていいお顔できるよ」とイヌの隣でいいお顔します。

そこへお母さんがやってきて…

いいおかお の解説・感想


いいおかおとは


最初ふうちゃんがやってる”いいお顔”っていうのは、モナリザとか仏像のような微笑、アルカイックスマイルの表情です。自然体でのびのびしたご機嫌の表情です。山で新鮮な空気を思い切り吸い込んだ時のような顔と言えば何となく想像できるかな。顔の表情もさることながら、むしろ穏やかな心持ちの方が本質なのかなとも思いました。”いいお顔”に象徴されるように全体的にリラックスした気分と平和な雰囲気に包まれている絵本です。小さいこどもも安心して楽しめます。大人も癒やされます。

小さい子が喜ぶ作り


対象年齢0歳からですからお話というほどのものはありません。最初は一人でいいお顔をしていて、ネコが来て一緒にいいお顔をして、イヌ、ゾウと繰り返されます。動物たちがふうちゃんの真似をするっていうのが小さい子には面白いでしょう。子どもは真似っこが好きですからね。そして繰り返しというのも小さい子の好きな要素です。でも完全に同じ繰り返しではなくてそれぞれの動物の特色が含まれた繰り返しになってるんですね。例えば、ネコは「にゃー」、イヌは「わんわん」、ゾウは「のっしのっし」。こんな声の響きで読者の子どもを喜ばせてくれます。

最初見開き2ページの左端にふうちゃんが座っています。次にネコがやってきてふうちゃんの隣に座ります。まだ右側のページは空白です。次にイヌがやってきてネコの隣、右ページの左側に座ります。そして最後にゾウがやってきて右端に座り見開き2ページが埋まります。ずっと定点観測している感じの描き方なので仲間が右側に増えていくのが視覚的にもわかりやすくて、読者はこれでだんだん嬉しくなってきて、みんな揃った時には”こんなににぎやかになった!”という雰囲気を感じてもらえるでしょう。ほんの細かい事ですけど、小さい子どもの感覚を考えて工夫されてるのを感じます。

特徴的な瀬川康男さんの絵


動物たちの人懐っこい表情がとてもかわいいです。また、それぞれの動物が登場するシーンでは見開き2ページに渡ってその動物だけが大きく描かれます。シンプルな構成でとてもわかりやすいです。表紙の絵も大人から見るとシンプルすぎるように思えますが小さい子にはシンプルな方がいいんでしょうね。ネコだけがドーンと描かれててその表情がまたいいし、コントラストがハッキリしてて、お子さんの興味をひいて、「これ読んで~」って手に取ってもらえそうです。絵は瀬川康男さん独特のタッチで、最近のキレイに整ったアニメ的な絵本とは雰囲気がだいぶ違います。色使いはかなり地味です。瀬川康男さんの絵は国内外で高く評価されているようです。

終わり方もいい


最後にお母さんが帰ってきてビスケットをくれます。それをみんなで食べます。みんないいお顔だったのが、「ああ おいしい」でもうニッコニコ。とびきりいいお顔になりました。まだ小さい子どもには嬉しい最後のエピソードですね。絵本の中からビスケットをおすそ分けしてもらって、読者も一緒にもぐもぐしても楽しそうです。一番最後の文は「おいしいは ど~こ」という読者への問いかけ。お子さんに絵本の中を自由に指さしてもらったり、「ここかな~?」ってお子さんのほっぺやらお口やらお腹やらをつついてあげてもいいかも。楽しく絵本を閉じれますね。

読んでる大人も癒やされる


親御さんは普段いいお顔してますか?忙しくなかなかそんな気持ちにはならないですかね。でもね、この絵本を読み聞かせて子どもが喜んでくれたなら、親御さんも自然にいいお顔になるだろうと思います。この絵本を読んだ後にお子さんと親御さんでいいお顔を見せ合っていただきたいと思います。

非常にシンプルな文章です。でもきれいな、そして例えるなら子どもを抱っこしたお母さんが語りかけるようなそんな優しい日本語なんですよ。これは読んでる大人も優しい気持ちになれそうです。そしてフォントが普通の絵本より大きくひらがなの美しさを感じさせるとともに、絵との調和もとられています。

『いいおかお』ってなんかいい


『いいお顔』をテーマに選んだ絵本って私は他には知らないです。目の付け所が面白いなぁって思いました。もしかして昔は『いいお顔』って『いないいないばあ』みたいにこどもをあやすのに一般的に使われてたんですかね。

この本は当時珍しかった0歳向けの絵本シリーズ『松谷みよ子 あかちゃんの本』の一冊です。このシリーズの第一作目が『いないいないばあ』で現在日本でもっとも売れたこども向け絵本です。『いいおかお』はそれに続く第二作目になります。このシリーズは他にもご紹介していますよ。 → 『もしもしおでんわ』『もうねんね』『おさじさん』『おふろでちゃぷちゃぷ

松谷みよ子さんの他の作品もご紹介しています。 → タグ『松谷みよ子

こんなCDもあるんですよ。『いいおかお』の歌も入っています。