
文 ビアトリクス・ポター
絵 同上
訳 いしいももこ
発行 福音館書店
初版 1971/11/1
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ~やや多め
ページ数 55
発行部数 153万部(旧版)2014時点ミリオンぶっく
オススメ度 B
4匹の小さなうさぎとお母さんうさぎが、もみの樹の下の穴に住んでていました。
ある日お母さんは買い物に出かけるので、子ども達に外で遊んでおいでと言いました。そしてマクレガーさん(人間)の畑にだけは行ってはいけないと言い添えました。昔お父さんうさぎがそこで事故に遭いマクレガーの奥さんに肉のパイにされたというとても危険な場所なのです
ピーターは4匹の中で唯一のいたずらっ子。他の3匹はいい子で森で野いちごを摘んでいますが、ピーターは一目散にマクレガーさんの畑に向かいました。
ピーターはそこらにある野菜をかじって回ります。ところがその内にマクレガーさんと鉢合わせしてしまいます。ピーターは必死になって逃げます。いつの間にか両足の靴をなくし、逃げ回ります。しかし樹にかけてあった網に上着のボタンが引っかかってしまい、動けなくなってしまいました。ピーターはもうだめだと涙をこぼします。スズメが頑張って逃げるように言います。マクレガーさんがふるいを持って近づいてきました。
ピーターラビットは世界中で長く愛されてきたキャラクターですから誰しも絵を目にしたことはあるかと思います。私も絵は知っていましたが、今回初めて絵本を手に取りました。きっとかわいいお話なのだろうと思っていたら、なんとハラハラドキドキの冒険物じゃないですか。なにせ過去にお父さんが肉のパイにされたという農場へ潜り込むんですから命がけなのです。とは言え子どもの悪戯心が発端となっている事ですし、実際は狭い範囲での冒険であり、登場する殆どのキャラクターがかわいらしい動物たちという事もあり、あくまでも子ども向け作品です。本作はピーターラビットの絵本シリーズの第一作にあたり、他の作品はまだ読んでいないので言及できませんが、本作は男の子も十分楽しめるものです。
その後のお話の概略です。ピーターはその後も隠れたり追いかけられたりしながら何とかヘトヘトになって家に帰り着きます。その冒険の描写がこの本のメインです。そして夜にお腹の具合が悪くなって寝込み、お母さんから薬をもらい、他の3匹が美味しそうな夕食をいただくところでおしまいです。
お母さんうさぎが着ている服がいかにも優しいお母さんという感じで安らぎを覚えますね。実はピーターはこの2週間の間に上着2枚と靴を2足もなくしているのですが、その事を詰問することもなく、優しく看病しています。優しいお母さんというのは子どもの絵本にはホント大事な要素ですね。ましてや命がけの冒険をした後ですから、読者の子どももホッとすることでしょう。
なんと言っても飾っておきたくなるような写実的な絵がやはり魅力なんです。本書を読んだことがないとしても、この絵を目にしたことがないという人は稀でしょう。イギリスの田園風景も美しいです。温かさ、懐かしさ、かわいらしさ、豊かさと言ったものが滲み出しています。そしてリアルな描写の中に、うさぎが服を着ていたり、料理を作ったりしているファンタジーの部分が含まれています。そのリアルさとファンタジーの組み合わせの絶妙さが、この作品世界を唯一無二のものにしてると思うんですよね。ビアトリクス・ポターさんは自然を愛し、動物を愛し、そして菌類の研究もしていたそうです。愛情と科学と2つの視点からこの作品は生まれたのかも知れないと思いました。
お父さんが肉のパイにされたというのは、そのまんま本文に書いてあります。こども向けにしてはブラックにも思える表現ですが、絵本、特に海外の作品はこういうこと珍しくないですよね。私はそんなに気になりませんでした。ラストで寝込むピーターをよそに他の3匹は美味しい夕食をいただく辺りも、割り切った感じが海外らしいです。絵の印象とはまったく違ってあんまり子どもに媚びない面もあるんです。
見開きで片方のページが絵、もう片方が文章という一貫した構成になっています。文章は短いところもあるけど、1ページにびっしりかいてあるページもあります。そして55ページとちょっと長いんですよね。本が好きな子はのめり込んで時間を忘れるかも知れませんが、飽きっぽい子には長さにちょっと心配があるかも。
それと、絵がメインの絵本を見慣れた私には、本書の絵はどれも挿絵程度の大きさしかなくて、ちょっと物足りなさを感じました。元々判型も小さい(14.6×11cm。かわいい手のひらサイズ)ですし。こんな美しい絵なのだから、もっと絵を楽しませて欲しかったなと思います。絵本というよりも、文章短め絵が多めの童話本と言った方が近いかも知れません。これもやはり小さい子どもが読み聞かせ途中で飽きる心配をしてしまう要因ですね。でも調べてみると、元々この絵本は作者が家庭教師の先生の息子さんに送った絵葉書が原型らしいので、これは仕方ないことなのでしょう。
因みに文章は無駄がない非常に簡潔なものです。カタカナが多く、漢字は少しですべてふりがながふってあります。
お母さんがピーターに飲ませる薬は”かみつれ”を煎じたものです。調べてみたらこれはカモミールの事なんですね。どんなものか読後にカモミールティーを親子でいただいてみるというのも、また一興かと思います。
ピーターラビットのシリーズは全部で24巻になります。うさぎ以外の動物もたくさん出てきます。またピーター達も成長してやがて大人になります。各巻は話のつながりもあります。例えばピーターの上着はマクレガーさんの手に渡りかかしに使われるのですが、別の巻でピーターのいとことそれを取り返すお話が展開したりします。時間的にも人間関係にも広がりのある世界なんですね。
絵本の他にもアニメーションになったり、実写映画化もされています。(なんか印象が違う。汗。でもストーリーから感じる印象には合っていますね。)
さらには作者のビアトリクス・ポターを描いた映画まで。
本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険』
絵 同上
訳 いしいももこ
発行 福音館書店
初版 1971/11/1
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ~やや多め
ページ数 55
発行部数 153万部(旧版)2014時点ミリオンぶっく
オススメ度 B
ピーターラビットのおはなし のあらすじ・内容
4匹の小さなうさぎとお母さんうさぎが、もみの樹の下の穴に住んでていました。
ある日お母さんは買い物に出かけるので、子ども達に外で遊んでおいでと言いました。そしてマクレガーさん(人間)の畑にだけは行ってはいけないと言い添えました。昔お父さんうさぎがそこで事故に遭いマクレガーの奥さんに肉のパイにされたというとても危険な場所なのです
ピーターは4匹の中で唯一のいたずらっ子。他の3匹はいい子で森で野いちごを摘んでいますが、ピーターは一目散にマクレガーさんの畑に向かいました。
ピーターはそこらにある野菜をかじって回ります。ところがその内にマクレガーさんと鉢合わせしてしまいます。ピーターは必死になって逃げます。いつの間にか両足の靴をなくし、逃げ回ります。しかし樹にかけてあった網に上着のボタンが引っかかってしまい、動けなくなってしまいました。ピーターはもうだめだと涙をこぼします。スズメが頑張って逃げるように言います。マクレガーさんがふるいを持って近づいてきました。
ピーターラビットのおはなし の解説・感想
かわいいお話…じゃなくて冒険の話でした
ピーターラビットは世界中で長く愛されてきたキャラクターですから誰しも絵を目にしたことはあるかと思います。私も絵は知っていましたが、今回初めて絵本を手に取りました。きっとかわいいお話なのだろうと思っていたら、なんとハラハラドキドキの冒険物じゃないですか。なにせ過去にお父さんが肉のパイにされたという農場へ潜り込むんですから命がけなのです。とは言え子どもの悪戯心が発端となっている事ですし、実際は狭い範囲での冒険であり、登場する殆どのキャラクターがかわいらしい動物たちという事もあり、あくまでも子ども向け作品です。本作はピーターラビットの絵本シリーズの第一作にあたり、他の作品はまだ読んでいないので言及できませんが、本作は男の子も十分楽しめるものです。
その後のお話の概略です。ピーターはその後も隠れたり追いかけられたりしながら何とかヘトヘトになって家に帰り着きます。その冒険の描写がこの本のメインです。そして夜にお腹の具合が悪くなって寝込み、お母さんから薬をもらい、他の3匹が美味しそうな夕食をいただくところでおしまいです。
優しいお母さんの存在は大きい
お母さんうさぎが着ている服がいかにも優しいお母さんという感じで安らぎを覚えますね。実はピーターはこの2週間の間に上着2枚と靴を2足もなくしているのですが、その事を詰問することもなく、優しく看病しています。優しいお母さんというのは子どもの絵本にはホント大事な要素ですね。ましてや命がけの冒険をした後ですから、読者の子どももホッとすることでしょう。
最大の魅力はやはりこの絵でしょう
なんと言っても飾っておきたくなるような写実的な絵がやはり魅力なんです。本書を読んだことがないとしても、この絵を目にしたことがないという人は稀でしょう。イギリスの田園風景も美しいです。温かさ、懐かしさ、かわいらしさ、豊かさと言ったものが滲み出しています。そしてリアルな描写の中に、うさぎが服を着ていたり、料理を作ったりしているファンタジーの部分が含まれています。そのリアルさとファンタジーの組み合わせの絶妙さが、この作品世界を唯一無二のものにしてると思うんですよね。ビアトリクス・ポターさんは自然を愛し、動物を愛し、そして菌類の研究もしていたそうです。愛情と科学と2つの視点からこの作品は生まれたのかも知れないと思いました。
意外とブラックな表現も
お父さんが肉のパイにされたというのは、そのまんま本文に書いてあります。こども向けにしてはブラックにも思える表現ですが、絵本、特に海外の作品はこういうこと珍しくないですよね。私はそんなに気になりませんでした。ラストで寝込むピーターをよそに他の3匹は美味しい夕食をいただく辺りも、割り切った感じが海外らしいです。絵の印象とはまったく違ってあんまり子どもに媚びない面もあるんです。
ページ数が多くて絵が小さい
見開きで片方のページが絵、もう片方が文章という一貫した構成になっています。文章は短いところもあるけど、1ページにびっしりかいてあるページもあります。そして55ページとちょっと長いんですよね。本が好きな子はのめり込んで時間を忘れるかも知れませんが、飽きっぽい子には長さにちょっと心配があるかも。
それと、絵がメインの絵本を見慣れた私には、本書の絵はどれも挿絵程度の大きさしかなくて、ちょっと物足りなさを感じました。元々判型も小さい(14.6×11cm。かわいい手のひらサイズ)ですし。こんな美しい絵なのだから、もっと絵を楽しませて欲しかったなと思います。絵本というよりも、文章短め絵が多めの童話本と言った方が近いかも知れません。これもやはり小さい子どもが読み聞かせ途中で飽きる心配をしてしまう要因ですね。でも調べてみると、元々この絵本は作者が家庭教師の先生の息子さんに送った絵葉書が原型らしいので、これは仕方ないことなのでしょう。
因みに文章は無駄がない非常に簡潔なものです。カタカナが多く、漢字は少しですべてふりがながふってあります。
”かみつれ”とは
お母さんがピーターに飲ませる薬は”かみつれ”を煎じたものです。調べてみたらこれはカモミールの事なんですね。どんなものか読後にカモミールティーを親子でいただいてみるというのも、また一興かと思います。
本作はまだ始まり
ピーターラビットのシリーズは全部で24巻になります。うさぎ以外の動物もたくさん出てきます。またピーター達も成長してやがて大人になります。各巻は話のつながりもあります。例えばピーターの上着はマクレガーさんの手に渡りかかしに使われるのですが、別の巻でピーターのいとことそれを取り返すお話が展開したりします。時間的にも人間関係にも広がりのある世界なんですね。
アニメーションや映画にも
絵本の他にもアニメーションになったり、実写映画化もされています。(なんか印象が違う。汗。でもストーリーから感じる印象には合っていますね。)
さらには作者のビアトリクス・ポターを描いた映画まで。
本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険』
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