作 土田ヒロミ
監修 日紫喜均三
発行 福音館書店
初版 1983/1/1
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 28
発行部数 不明
オススメ度 B

もうどうけんドリーナ のあらすじ・内容


盲導犬訓練所で7匹の子犬が生まれました。その内の1匹であるドリーナが、パピーウォーカーとの平穏な暮らし、盲導犬としての適性テスト・訓練を経て、目の見えないましまさんと出会い、そして家族として一緒の生活を送る様子を写真と文で追っていくドキュメンタリー絵本です。

もうどうけんドリーナ の解説・感想


ひと昔前に『盲導犬クイールの一生』という本がブームになったことがありましたね。映画やドラマにもなってすごかったです。



それよりも前にこの『もうどうけんドリーナ』という絵本が出ていたことを私は最近まで知りませんでした。ブームに後乗りした安易な本ではないということですし、実際真面目で淡々とした語り口は感動の押し付けとはほど遠く、いろんな想像を巡らせる余地を残しています。クイールとちょっと違うのはドリーナの死までは追いかけていないところです。

前半はドリーナの誕生から、パピーウォーカー(子犬を人間との生活に慣れさせるために一時的に預かる人)との生活、訓練所でのテストと訓練。後半はましまさんとの出会い、ましまさんとの訓練、そしてましまさん家族と一緒に生活する様子が描かれています。

前半はパピーウォーカーとの生活の描写がメイン。パピーウォーカーというのは普通の一般家庭なんです。飼い犬のように家族の一員として育てられます。でもそれは10ヶ月ほどで終わり、また訓練所へと戻されます。ドリーナと仲良しだった幼稚園児のよしお君の表情が愛情と寂しさが相まって印象的です。

その後のテストでは。盲導犬に必要な資質を試されます。そして訓練。盲導犬は欲しい人に対して絶対的に数が不足しているそうですが、このテストと訓練を見ていると、なかなか簡単には盲導犬の数を増やせないのもわかる気がします。細かいところまで非常にレベルの高い能力が必要とされるんですね。この部分はページ数が少ないのですが、でもこういう話は子どもも知的好奇心をくすぐられると思いますし、視野が広がっていいと思います。

ましまさんとのエピソードがこの絵本の半分以上を締めています。見てると盲導犬というのは本当に行儀よく大人しいものですね。しかしそれでドリーナ自身は幸せなんだろうかとも思いましたが、最後の2つの写真にちょっと安心させられました。特にましまさんと一緒に走るドリーナの笑顔がいいです。

犬の可愛さ、賢さ。犬が人間を助ける仕事をしてくれるという事実。そして盲導犬となるまでの道のり。成長。いくつもの出会いと別れ。この本には色んなことが描かれています。盲導犬の制度について批判があることも承知していますが、少なくともこの絵本がこどもに悪い影響を与えることはないと思いますので、ご紹介させていただきました。

盲導犬という存在は知っていても、どんな生い立ちで、どんな訓練を受けたりするのか、詳しい事は知らない人が多いと思います。なのでお父さんお母さんも興味深く読めると思います。