
文 松谷みよ子
絵 朝倉摂
発行 講談社
初版 2010/8/24
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 40
発行部数 不明
オススメ度 B
ある石ころばかりの貧しい村に『たつのこたろう』呼ばれる男の子がおばあさんと住んでいました。たろうは他の子どもから龍の子だとからかわれいつもひとりぼっちでした。
たろうは隣村のあやという女の子と友達になります。あやは森の動物達にも慕われていました。
ある晩、おばあさんはたろうに母親の事を話して聞かせます。「たろうの母親はある事情から龍になってしまい、その後すぐにたろうを産んだ。今も遠い北の湖でお前を待っているかも知れない」そこまで聞いた時、あやのおじいさんが駆け込んできました。あやが赤鬼にさらわれたというのです。
たろうはあやを助けに、そして母親を探しに旅に出かけます。まず、おばあさんのすすめで天狗のところに行き、力のつく酒をもらいます。その力で鬼を退治し、あやを救出。そしてその近隣の村でたろうとあやは鬼を退治してくれたお礼にと白米のおにぎりをもらいます。初めて白米を食べたたろうはその美味しさに感激し、おばあさんにも食べさせてあげたいと涙を流します。たろうの村はあわやひえしかとれないのです。しかしこの村には豊かな土地があり、田んぼが広がっています。こんな土地があればとたろうは思うのでした。
たろうはあやと別れ、母親を探す旅に出ます。
スケールが大きく、冒険のエピソードも数々あり、よくこのページ数に収めたものだと思います。後でご説明しますが、本作は元々200ページ以上ある童話作品を絵本向けに凝縮したものです。なので話の展開を急ぎすぎているという面は否定できません。上記のあらすじの分で絵本全体の半分の20ページ位に収めいています。ほとんどのページが見開き2ページで1場面ですから、約10場面でさっとまとめているわけです。急ぎすぎててちょっと感情移入しにくいかも知れませんね。
作者が日本の民話を研究する過程で、長野県の『小泉小太郎』の伝説に出会い、それをベースにこの作品を作り上げたのだそうです。天狗や鬼、雪女、龍など昔話の常連キャラクター達が総登場してとても贅沢です。その一方で、母親が龍になった背景。そして貧しい村の様子。そうした描写がお話をより深いものにしています。
たろうは道中で度々その心根の優しさを見せます。そしてさらに世の中のいろんな事情を知ったたろうは貧しい人達の役に立ちたいと考えるようになっていきます。この辺りが、本作が単なる冒険物にとどまらない所です。ストーリーはそう難しくはないので8歳よりももっと年下でも理解できるかも知れませんが、この部分をこども達に少しでも心に留めてもらえた方がいいだろうと思って対象年齢を8歳からにしました。でも8歳でも難しいですかね。本の帯には『小学校中級から』と書いてありました。あとは親御さんの判断で一番良さそうな時期を選んでもらえればと思います。
お話の続きですが、さっと概略だけご紹介しましょう。たろうはその後雪女に襲われたりしますが何とか切り抜け、龍となった母親に出会います。ここで龍になってしまった理由が語られます。これもまた貧困故でした。たろうと母親の龍は協力して貧しい人たちのために行動を起こします。そして大団円を迎えるのです。
美しく、幻想的な絵も素晴らしいです。
初版が2010年となっていますがこれは新装版絵本の出版年です。元々の原作にあたる童話作品が世に出たのは1960年で、松谷みよ子さんの代表的傑作と評されています。絵本版の本作をおすすめ度Aにしなかったのは、元の作品の方が紛れもなく傑作だからです。この絵本で興味を持ったら是非元々の童話を読むことをおすすめします。挿絵はわずかで絵本ではありませんがこちらも『小学校中級から』の対象になっています。

松谷みよ子さんは2015年にお亡くなりになったそうです。このような本を遺してくださったことに感謝するとともに、ご冥福をお祈りします。
本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険』
絵 朝倉摂
発行 講談社
初版 2010/8/24
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 40
発行部数 不明
オススメ度 B
たつのこたろう のあらすじ・内容
ある石ころばかりの貧しい村に『たつのこたろう』呼ばれる男の子がおばあさんと住んでいました。たろうは他の子どもから龍の子だとからかわれいつもひとりぼっちでした。
たろうは隣村のあやという女の子と友達になります。あやは森の動物達にも慕われていました。
ある晩、おばあさんはたろうに母親の事を話して聞かせます。「たろうの母親はある事情から龍になってしまい、その後すぐにたろうを産んだ。今も遠い北の湖でお前を待っているかも知れない」そこまで聞いた時、あやのおじいさんが駆け込んできました。あやが赤鬼にさらわれたというのです。
たろうはあやを助けに、そして母親を探しに旅に出かけます。まず、おばあさんのすすめで天狗のところに行き、力のつく酒をもらいます。その力で鬼を退治し、あやを救出。そしてその近隣の村でたろうとあやは鬼を退治してくれたお礼にと白米のおにぎりをもらいます。初めて白米を食べたたろうはその美味しさに感激し、おばあさんにも食べさせてあげたいと涙を流します。たろうの村はあわやひえしかとれないのです。しかしこの村には豊かな土地があり、田んぼが広がっています。こんな土地があればとたろうは思うのでした。
たろうはあやと別れ、母親を探す旅に出ます。
たつのこたろう の解説・感想
スケールが大きく、冒険のエピソードも数々あり、よくこのページ数に収めたものだと思います。後でご説明しますが、本作は元々200ページ以上ある童話作品を絵本向けに凝縮したものです。なので話の展開を急ぎすぎているという面は否定できません。上記のあらすじの分で絵本全体の半分の20ページ位に収めいています。ほとんどのページが見開き2ページで1場面ですから、約10場面でさっとまとめているわけです。急ぎすぎててちょっと感情移入しにくいかも知れませんね。
作者が日本の民話を研究する過程で、長野県の『小泉小太郎』の伝説に出会い、それをベースにこの作品を作り上げたのだそうです。天狗や鬼、雪女、龍など昔話の常連キャラクター達が総登場してとても贅沢です。その一方で、母親が龍になった背景。そして貧しい村の様子。そうした描写がお話をより深いものにしています。
たろうは道中で度々その心根の優しさを見せます。そしてさらに世の中のいろんな事情を知ったたろうは貧しい人達の役に立ちたいと考えるようになっていきます。この辺りが、本作が単なる冒険物にとどまらない所です。ストーリーはそう難しくはないので8歳よりももっと年下でも理解できるかも知れませんが、この部分をこども達に少しでも心に留めてもらえた方がいいだろうと思って対象年齢を8歳からにしました。でも8歳でも難しいですかね。本の帯には『小学校中級から』と書いてありました。あとは親御さんの判断で一番良さそうな時期を選んでもらえればと思います。
お話の続きですが、さっと概略だけご紹介しましょう。たろうはその後雪女に襲われたりしますが何とか切り抜け、龍となった母親に出会います。ここで龍になってしまった理由が語られます。これもまた貧困故でした。たろうと母親の龍は協力して貧しい人たちのために行動を起こします。そして大団円を迎えるのです。
美しく、幻想的な絵も素晴らしいです。
初版が2010年となっていますがこれは新装版絵本の出版年です。元々の原作にあたる童話作品が世に出たのは1960年で、松谷みよ子さんの代表的傑作と評されています。絵本版の本作をおすすめ度Aにしなかったのは、元の作品の方が紛れもなく傑作だからです。この絵本で興味を持ったら是非元々の童話を読むことをおすすめします。挿絵はわずかで絵本ではありませんがこちらも『小学校中級から』の対象になっています。

松谷みよ子さんは2015年にお亡くなりになったそうです。このような本を遺してくださったことに感謝するとともに、ご冥福をお祈りします。
本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険』
コメント