文 レオ・レオニ
絵 同上
訳 谷川俊太郎
発行 好学社
初版 1988/4/
対象年齢 6歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 31
発行部数 不明
オススメ度 B

アレクサンダとぜんまいねずみ のあらすじ・内容


ねずみのアレクサンダを見つけた人間はいつも叫び声をあげたりほうきで追い回したりします。

でもおもちゃのぜんまいねずみウィリーは人間のこどもアニーに可愛がられています。

ウィリーを羨んでいたアレクサンダはある日ウィリーから不思議な話を聞きます。変身の魔法を使えるとかげがいるというのです。アレクサンダはぜんまいねずみになりたいと願います。

聞かされた場所へ行くと確かに魔法を使えるとかげがいました。本当にぜんまいねずみに変えてくれるのかと問うと、とかげは満月の夜に紫の小石を持ってくるようにと答えました。

アレクサンダは紫の小石を探し回りますが、見つかりません。疲れ果てて家に帰ると物置の隅に置かれた箱の中にウィリーがいるのを見つけました。アニーが誕生日に新しいおもちゃを沢山もらったので古いおもちゃはみんな捨てられたというのです。アレクサンダはウィリーが可哀想で泣かんばかり。するとふとそばに紫の小石があるのが目に留まりました。

アレクサンダとぜんまいねずみ の解説・感想


奥行きのあるしっかりしたお話


起承転結のしっかりしたストーリーのあるお話です。内容は基本的にファンタジーです。奥行きがあって考えさせられる部分もあるので対象年齢は少し高めの6歳からにしました。でもそれでいてストーリーはシンプルでわかりやすいので6歳より小さい子でも十分お話を理解できて楽しめるとは思います。因みに小学校低学年の教科書に載ったこともあるようです。

幸せとは


副題は『ともだちをみつけたねずみのはなし』。アレクサンダは当初、ウィリーのようにみんなに可愛がられることが『幸せ』であると思い、それを求めますが、その理想であったはずのウィリーの不幸を目の当たりにします。そしてウィリーの境遇を自分の事のように心から悲しんだ時に、トカゲの導きによってハッピーエンドに向かうのです。大切な友達と暮らすという『幸せ』を得るのです。

文章にはまったく出てきませんが、ウィリーはウィリーでアレクサンダの自由な生活を羨んでいたのかも知れません。何しろぜんまいを巻いてもらったときしか動けないのですから自由がないのです。しかしアレクサンダの生活も決して幸せいっぱいのものではありませんでした。人間には嫌われ追い回され、現実はそう甘くはありません。アレクサンダにしてもウィリーにしても人との比較においてしか幸せを考えていなかったように思います。でも実は幸せは足元に転がっているということをトカゲが気づかせてくれたというようにも思われるのです。

簡潔でいて人生の秘密を含んでいるレオ・レオニさんの作品


レオ・レオニさんの作品はまだそう多くは読んでいませんが、どれも本当に簡潔明快なお話なのにポツンと心に残る人生の秘密のようなものが含まれていて、そこが魅力のように感じます。本作もそういう味わいがありました。

美しく幻想的な絵


それにしても絵が美しいです。夜の場面なんかは幻想的でさえあります。和洋入り混じったような多彩な模様が面白い味付けをしています。切り貼りだけでこんなにも静かで豊かなイメージを描けるんですね。