文 エドワード・アーディゾーニ
絵 同上
訳 あべきみこ
発行 こぐま社
初版 1998/6/1
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 48
発行部数 不明
オススメ度 B

時計つくりのジョニー のあらすじ・内容


小さいジョニーは手先が器用でモノづくりが大好きな男の子です。

ジョニーはおばさんから貰った大好きな本『大時計のつくりかた』を何度も何度も実は100回も眺めていましたが、ある日ついに大時計を自分で作る決心をします。

しかし、この素晴らしい思いつきに共感してくれる人はほとんどいませんでした。両親は「つまらないこと」「くだらないこと」と言い、学校の先生は「小さいからそんな難しいことはできない」と言い、同級生からも馬鹿にされました。しかし一人だけスザンナという女の子だけは「ぜったいできるわよ」と言ってくれました。ジョニーは気を取り直して「作ってみせるぞ」と決心しました。

ジョニーはまず大時計のケースを作りました。そして文字盤と針を作りました。しかし歯車、鎖、、重り、振り子といった金属部品は自分では作れません。金物屋さんや自動車修理屋さんに行ってもダメ、両親に相談してもダメ、最後にスザンナに相談すると「鍛冶屋のジョーさんのところに行ってみたら?」と言ってくれました。

ジョーさんのところには歯車、鎖、重りはありましたが振り子はありませんでした。それでも諦めきれないジョニーがジョーさんに熱心にお願いすると振り子を一から作ってくれました。これで部品が揃いました。ところが部品をかごに入れて家に帰る途中、いじめっ子がかごをひったくって行ってしまいました。簡単にへこたれないジョニーでしたが、さすがにこれには涙がこぼれました。

ジョニーの苦労はまだまだ続きます。しかし最終的には大時計を完成させ、当初バカにしていた周囲の人から認められ、さらにビックリするような結末を迎えます。

時計つくりのジョニー の解説・感想


とっても夢のある作品です。なんてったって本物の大時計を少年が自分で作っちゃうんですから。しかもその後のラストがまた予想を超えてて面白くてこれもまたある意味夢があります。ここでは明かしませんが、ラストも是非楽しみにしていただきたいと思います。

ジョニーは大時計を作ることにしてからもうワクワクする気持ちを抑えきれません。でも周囲の殆どがそれを理解してくれないんですよね。実の両親さえも。でもただ一人スザンヌという女の子だけはこのワクワクを共有してくれました。気持ちを理解してくれる人がいてホントによかった。それにしてもこんなにも面白そうな事を何故みんなバカにしたりするのでしょうね。ワクワクするって素敵なことじゃないですか。ワクワクするって、好きなことに夢中になるって、とても幸せなことだし、その経験は子どもを成長させてもくれるでしょう。

ジョニーの両親は最終的にはジョニーの才能を認めてくれるのですが、最初の内はホントにひどかったです。ジョニーが大時計を作ろうと決心した時、素晴らしい思いつきにワクワクする心を抑えきれずに母親に決意表明しに行きますが、相手にされません。そして父親も。私はこの場面が一番キツかったです。これは子どもの親としては反面教師にしないと。絵本中には両親が「またジョニーが馬鹿なことをやっている」と言う場面が何度も何度もあります。そしてこのセリフだけがフォントが太字になっています。これは親に向けて作者が意図してそうしたのかも知れませんね。

作品全体からどことなくユーモアも感じられます。例えばジョニーが好きな三冊の本。『船のもけいのつくりかた』『テーブルといすのつくりかた』そして『大時計のつくりかた』です。何とも微笑ましいとともに、面白い子だなって思いませんか?

ジョニーは最後にみんなに認められます。読者は痛快な気持ちになるでしょうが、でもジョニー本人は見返してやったなどとは露程も思ってないんでしょう。ただ自分の好きな事・夢をなし遂げて嬉しいというだけなのだろうと思います。お話の途中で意地悪や周囲の無理解からうなだれたり、泣いたりする場面が何度かでてきますが、それでも多分ジョニーはそれに対する反感を持ったりしなかったのではないかな。純朴なキャラクターに好感がもてます。

主人公のジョニーだけじゃなくてスザンナもいい子です。子ども達みんなしてジョニーをいじめていてもスザンナは仲間には入りません。優しいだけじゃなくて自分を持ってるところがいいです。そして偏見なくジョニーと一緒にワクワクしてくれるところもいいです。因みにこの絵本は著者のお孫さんのスザンナに献呈されてるんですよ。

絵が特徴的です。アニメーションの絵コンテみたいな若干ラフさのある手作り感のある絵です。時々漫画のように吹き出しのセリフが入っているのが絵にリアリティを加えているような気もして、この辺も面白みがあります。

ジョニーのように自分の好きなことに一途になる人のお話を他にもご紹介していますよ。『あたまにつまった石ころが』『雪の写真家ベントレー』をご覧ください。また、『個性を大切にする』という主旨の絵本は他にも色々ありますよ。こちらもご覧ください。 → 『個性

同じ作者の他の作品『チムとゆうかんなせんちょうさん』もご紹介しています。本作が気に入ったらこちらもご覧ください。これも何かに夢中になっている男の子のお話です。

この絵本、出版社のサイトでは対象年齢は5歳からになっています。私はここでは8歳からにしました。就学前の子どもがこれを読んで学校というものに悪い印象を持たないだろうかと余計な心配をしたのと、時計を作るということにワクワクを感じるには5歳だとまだ小さすぎることもあるのではないかと思ったからです。