文 西内ミナミ
絵 わかやましずこ
発行 福音館書店
初版 1972/7/
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 28
発行部数 不明
オススメ度 B

概要
孤独な漁師のおじいさんが海辺に住んでいました。

ある日そこに一匹の猫がふらりとやってきて住み着きます。しかしおじいさんはいつもアジの尻尾をくれるばかりで、それさえない日もあったため、猫は他へ行こうとします。

おじいさんは大きい魚を釣って食べさせてやるからと、猫をとどまらせますが…

 

感想
この本は『「こどものとも」人気作家のかくれた名作10選』というシリーズの中の一作です。かくれた名作と呼ぶにふさわしい作品で、一見超地味なのですが読む内にジワジワと面白さが伝わってきます。ただ入手困難なようなので、もし見かけたら是非お手にとってご覧になってみてください。

この本の一番の面白さは猫の様子です。お腹が空いてどうしようもないのに、おじいさんが気を持たせるものだから、つい期待して我慢します。ところがおじいさんがあまりにもマイペースでのんびり屋なので、その期待が延々と裏切られ続けます。絵の方でも猫の表情がかわいく描かれ、そわそわしたり、喜んだり、期待外れでガッカリしたり、お腹すきすぎてもう死にそう!、そんな様々な気持ちが伝わってきます。基本的に白黒のじみ~な絵なのですが猫だけに着色がされているのは、猫の様子・表情を見て欲しいという意図があるのでしょう。

そしてとうとう『老人と海』を彷彿とさせるような大魚が釣れます。ホントに大きいです。この場面は『11ぴきのねこ』のシリーズのような迫力があってこどもも喜びそう。ところが…それでもおじいさんがのんびりしててまだまだ猫は餌にありつけないのです(笑)。

おじいさんにまったく悪意はないのですが、まさにそれ故に面白さが増しますね。落語とか映画にもよくこんなシチュエーションあります。面白さの黄金パターンの一つなのでしょうね。

最後の最後、本当に最後のところで、やっと猫は餌にありつけます。ハッピーエンドでよかった。