文 カレン・ヘス
絵 ウェンディ・ワトソン
訳 石井睦美
発行 光村教育図書
初版 2011/8/25
対象年齢 10歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B
じゃがいも畑 のあらすじ・内容
貧しく父親のいない家庭の3人姉弟。母さんが夜仕事にいった隙に姉弟は近くの畑にじゃがいもを盗みに行きます。母さんを少しでも楽にさせるために。
畑に着くと3人はじゃがいもを袋に詰め始めます。じゃがいもは沢山ありました。途中畑の横を車が通り過ぎますが、畑に腹ばいになってやり過ごします。とても寒い夜で畑には霜がおりています。
やがて3人はじゃがいもの入った袋を引きずって家に帰ります。そして家に着きじゃがいもを仕分けしようと袋の中身をばらまきます。しかしそこにあったのは石ころがほとんどでじゃがいもはほんのひと山にしかなりませんでした。
じゃがいも畑 の解説・感想
姉弟の構成が絶妙
一番上の姉がこのじゃがいも泥棒を計画します。働き詰めのお母さんを少しでも助けるためです。もちろん間違ったやり方ではあります。でもよく気がまわりある意味ではしっかりものとも言えます。真ん中の弟はしょっちゅう姉に何かを命令されているのでしょう、多少反発するところがあります。半分遊び気分でこの計画に参加しており、中身はまだまだ子どもという感じです。一番末の弟はまだ小さく、畑へ行く時は荷車に乗って引っ張ってもらっています。畑にいる時も最後には居眠りしています。母親代わりとも言える姉のことが大好きです。この絶妙な3人の構成が、ますますこのお話に厚みを持たせ、味わい深くしているように思います。
周りの大人たちが素晴らしい
上のあらすじだけだととてもやるせないお話のようですが、最終的にはハッピーエンドで終わりました。ホントよかった。
周りの大人がみんないい人でした。お母さんの描写は少ないのですが、それでも家庭を支えようと仕事を頑張り、こども達にも愛情を注ぎ、貧しくとも人間として立派に成長させてあげたいという気持ちを持っている事が伝わってきます。畑の持ち主も多分そんなお母さんの事、そしてこども達の事をよく知っているのでしょう。罰を与えたり、逆に上から目線で施しを与えるのでもなく、粋な計らいをしてくれます。罪は罪。悪いことには違いないのですが、この子達が今度の事で何を学べるかを考えてくれているようです。こんな大人たちに見守られたこの子達のまっすぐな成長を祈らずにはいられません。
お話も面白い
ストーリーが二転三転して、こどもにとっては読み物としても面白いかと思います。じゃがいもと思っていたもののほとんどが実は石ころだったこと、そして後で畑の持ち主に謝りに行った時の意外な返答(これは大人にとっては意外でもなんでもないと思いまが…)。O・ヘンリーの短編、というほどではないですが、子どもにとってはそれに近い面白さが感じられるかも知れません。
この表紙を見てください
アースカラーで通した絵が、古き良き時代のような懐かしい雰囲気を持っています。小さくて見にくいかも知れませんが、表紙の絵がなんとも言えず好きです。これはじゃがいも畑へと向かう途上のシーンですね。悪いことをしようとしているのですが、そこには自然の美しさと子どもたちの高揚感のようなものが感じらて、とてもいいのです。
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