原作 アルフォンス・ドーデー
文 きしだえりこ
絵 なかたにちよこ
発行 偕成社
初版 1966/12/
対象年齢 6歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 33
発行部数 不明
オススメ度 B

スガンさんのやぎ のあらすじ・内容


スガンさんはやぎが好きでした。今まで6頭のやぎを飼ったことがありますが、いずれも山の中へ逃げてしまいオオカミに食べられてしまいました。

もうやぎを飼うのはよそうと思っていたスガンさんでしたが、やぎが好きなのでやはりまた飼うことになります。今度はキレイなメスのやぎでした。ブランケットと名付けられます。

でも、ブランケットもまたしばらくすると遠くの山の存在に気づき、あの素敵な山へ行きたいと言い出します。そしてある日小屋を抜け出して単身で山へと行ってしまったのです。

スガンさんのやぎ の解説・感想


こどもに媚びない絵本です。憧れと自由と勇気とそして自然の掟が描かれます。元々原作は童話ではなく『風車小屋だより』というフランス文学の短編集の中の一つの作品にあたります。

たどり着いた憧れの山は想像以上でした。美しい景色。美味しい草。そして自由。ブランケットは楽しくて楽しくてそこら中を駆け回ります。しかし日も暮れてきて…

とうとうオオカミに出会います。ブランケットは勇気を出し、死力を尽くして一晩中戦い抜きます。しかし明け方にとうとう力尽きて動けなくなります。みなまで言わず、ここでお話は終わります。

こどもはブランケットがどうなったのかと訊くでしょう。明確な答えはあとがきには書いてあります。おおかみに食べられたのです。

淡々とした文章が、このやぎの気高さ、そして自然の峻厳さをより際立たせてくれています。大人が読んでもいい絵本だと思います。私としては特に、オオカミと出会って、負けて食べられるとわかっていながらもその相手に向かって本当に最後の最後まで死力を尽くして戦うブランケットの心持ちの描写が好きなんです。もしかしたら子どもに理解はできないかも知れませんが、そうだとしてもちょっとでも触れてほしいなと思います。

あと、夕方になって寒くなってきて、オオカミの声が聞こえてきます。遠くでスガンさんが自分を呼ぶラッパの音が鳴っています。一瞬ブランケットは帰りたくなりますが、すぐに思い直して戻るよりもここにいようと決心します。子を持つ親としてはここのところを読んで、危ない選択をしているのを子どもには真似してほしくないという気持ちを持つ面もあろうかと思います。ですが、ここでブランケットは自分の意思で自分の望みで生きることを選んだのであり、ちょっと目をつぶってあげて欲しいと思います。

漢字もカタカナもほとんどなくてそれも全部ふりがながふってあります。難しい言葉もないですし、小さい子でもわからない話ではないですよ。一応6歳からとしてみましたが、どうでしょう。日本にはなかなかないタイプの絵本ですね。

他にも岸田衿子さんの作品をご紹介しています。この絵本が気に入ったらこれらもご覧ください。 → 『ぐぎがさんとふへほさん』『かばくん』『ジオジオのかんむり