文 岩崎ちひろ
絵 同上
発行 岩崎書店
初版 1973/9/10
対象年齢 10歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

戦火のなかの子どもたち のあらすじ・内容


ベトナム戦争で犠牲となっている小さなこども達への想いに、東京大空襲の記憶を織り交ぜて描いた絵本です。

物語絵本ではなく、詩の絵本と言った方がいいかと思います。

戦火のなかの子どもたち の解説・感想


子どもが子どもらしく生きられない悲しみ


これは親としてはなかなか重い本でした。残酷なシーンとかは一切ありません。こどもがこどもらしく生きられない悲しみに満ちた世界を描いています。読んでいると、自分のこどもがこんな事になったら…というように他人事で考えられなくなってしまうのです。

著者である岩崎ちひろさんの心情


著者の岩崎ちひろさんは年代的に東京大空襲を経験されたのだろうと思われます。そしてリアルタイムでベトナム戦争の情報を見て感じてきたのだと思います。そして居ても立ってもいられない気持ちでこの本を書かれたのではないでしょうか。

あとがきには、こんな文章がありました。
戦場にいかなくても戦火の中でこどもたちがどうしいているのか、どうなってしまうのかよくわかるのです。子どもは、そのあどけない瞳やくちびるやその心までが、世界じゅうみんなおんなじだからなんです。そういうことは、わたしがこどものための絵本をつくっている絵描きだからわかるのでしょうか。

我が事のようにベトナムのこども達の事を案じているのが、ここを読んでも伝わってきます。自分はなかなかここまで外国のこどもの事を考えることはできないです。実際今現在も世界の複数の場所で戦争が続いていますが、そこにいるこども達のことは、ニュースを見たその時だけは頭をよぎりますが、すぐに日常の細々したことに気を取られて忘れてしまいます。でも岩崎ちひろさんはもっと切実で自分自身も辛い心の持ちようなんだろうと想像されます。これは書かれている通りに絵本作家だからなのでしょうか。

でもそんな鈍くて戦争を知らない私のような人間でも、この本を読むとその切実さの一端を心に共有することができます。この本では理屈ではなくただ一人一人のこどもに焦点を当てて心の中の一瞬一瞬を描いています。それが自分の過去の記憶、自分のこどもとの経験などと結びついて、一時でも他人事でない感情をもたらしてくれるのかなと思います。

読み聞かせよりも子どもが自分で読む方が


文章はとても少ないです。読む本というよりも想像する本です。この本はさらっと読み流すよりも、じっくりと1枚1枚の絵に時間をかけて見ていくべきだと思います。だから読み聞かせには適さないと思いますし、自分で読むことを前提として対象年齢も10歳からとしてみました。

子を持つ親にも読んでいただきたいと思います。