著者 天野ひかり
発行 サンクチュアリ出版
対象 幼児~小学生

子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ の解説・感想


この本は、ふと絵本『おこだでませんように』を久しぶりに手に取った後に読みました。この絵本では大人とのコミュニケーションがうまくいってないことが遠因となって普段怒られてばかりいる男の子が主人公です。自分の経験から考えても、自分はこどもの気持ちを聞こうとしているだろうか、『上から教えを垂れる』という気持ちがどこかにあって自分の主張だけをしていないだろうか、そんな不安を改めて感じてしまいました。

さてこの本のことに戻りますが、この本はそんなこどもとのコミュニケーションに関する悩みをもつ親のためのアドバイス本です。副題として「怒って落ち込むその前に」と付いています。まさに『おこだでませんように』にとの関連性を感じます。著者の天野ひかりさんは、元々テレビ局のアナウンサーでした。自身が仕事と子育ての両立に悩んだそうです。そしてたまたま子育ての番組を担当したことから、知識があれば子育ての不安は小さくなりもっと楽しくなるということ、こどもと一緒にいる時間の長さよりもどんな風にすごすかが大事なんだという事に気づいたのだそうです。そして現在は『NPO法人 親子コミュニケーションラボ』を主宰して、親子のコミュニケーションに悩む大人にアドバイスを送っているのだそうです。

本書は大きく3つの章からなります。第一の章は、基本編。ここではコミュニケーション以前に大前提として知っておくべきことが書かれています。ここで私はいきなりガツンと殴られたような気がしました。著者は言い切ります。
親のいちばん大切な役割は「子どもの自己肯定感を育てること」です。

自己肯定感という言葉はよく聞きます。育児書には必ずと言っていいほど出て来る言葉です。が、なぜそれが重要なのかこの著者はとてもわかりやすい説明をしてくれます。自己肯定感は器なのだそうです。こどもが成長の過程で身につけていく知識や能力を入れるための器です。器が弱かったり小さいと、ちょっと失敗したり怒られたりするとヒビが入ったり中身が溢れてしまったりします。でも親の多くは器を丈夫で大きなものにする前に知識や能力を詰め込もうとしており、それは順番が逆だと主張されています。そしてさらに自己肯定感を育む唯一の方法は親の適切な言葉がけだとしているのです。いや~私はこの本の最初の章のさらに一番最初の節を読んだだけでこの本を手にしてよかったと思いました。

第二章の内容はそもそもの本書のダイトルそのまんま、『聴いてくれて話してくれる会話のコツ』です。8つのコツを提示してそれぞれ詳しく説明されています。8つのコツはそれぞれ非常に納得できるものです。何故かと言うとどれも最初に悪い例をあげているからなんですね。私もそうでしたが、多分これを読んだ親御さんは悪い例を読んだ時に「あっ自分もやってる!」といくつか思うでしょう。知らない内にこんな事をやってたなんて、ホント馬鹿だなって反省しましたよ、マジで。全部を今日からいきなりうまくやるというのは難しいでしょう。現実的にはできそうなものから徐々に身につけていくようなやり方になるのだろうと思います。

第三章は、実践編です。日常の様々なシーンでの会話を例にあげて、前述のコツを使った会話とは実際にどんなものかを解説していきます。実はこの第三章が本書のページ数の半分以上を占めています。28もの日常のシーンを例にしているのです。最初私は、ここまで細かく説明する必要があるのか?と思いました。コツさえ知ってればいいのではないかと。でも違うんですね。第二章の理解を深めるためにも第三章は必要です。それに8つのコツに収まりきらないTIPSを多分この著者はいっぱい持ってるんですね。ご自分の経験やNPO法人での経験によって蓄積されているのでしょう。その一端を知る意味でも第三章も読む価値ありなのです。