著 中島克治
発行 小学館
初版 2009/7/3
対象 小学生

小学生のための読解力をつける魔法の本棚 の解説・感想


最近ニュースで見たのですが、こどもの読解力の低下が問題になっているそうですね。読解力がないと国語以外の科目の試験も問題の意味が理解できないというような事態ともなるようで、非常に深刻です。

著者は名だたる進学校である麻布学園の先生です。でもこの本は勉強法一辺倒の内容ではありません。読解力というのは子どもたちの人間性を高めるものであるとおっしゃっている他、普段の生活での子どもへの接し方などについても数多く言及されています。先生だけあって実際の生徒の事例もいくつか挙げられていて興味深いです。

第一章は読解力の育て方・伸ばし方。いきなりですが、デキる子は読解力が高いそうです。そして読解力とは『人と向き合える力』でもあるとおっしゃっています。ですから勉強ばかりさせるなとも書いてあります。もちろん読解力を育てるには読書が重要であることが間違いないのですが、ここでは読書そのものよりも普段の子どもへの接し方に重点をおいて説明されています。

第二章は読書の効能と子どもが自ら本を読むようになるための方法。ここでは読書によって何が得られるかというメリットの説明、そして子どもが本を読むようになってくれるために親ができることの説明がなされています。

第三章は、読解力を高める読み方のコツ、そして漫画をうまく使う方法について説明されています。この章から、読解力を高めるための具体策へ徐々に踏み込んでいきます。ここではどういう読み方をしたらいいかについてです。

第四章は、学習法についてです。低学年と高学年についてそれぞれ、読解力を高めるための具体的な学習法が説明されています。ここでは『読む』ではなく、読んだ後に『書く』ことで力をつけるという内容になっています。以前何かで読んだことがありますが、新聞の記事を一日一つ選んで書き写すだけで、それを継続していると新聞記事のような簡潔にまとまった文章が書けるようになるそうですね。『書く』って大事なんですね。ここではそのように単純に書き写すから始まって、もっと発展的な方法へとつながっていきます。実際これをやったらかなり読解力がつくでしょう、と私も納得します。この学習は親子で一緒になって進めていく前提になっていますので、親御さんもそれなりの読解力がなければいけませんね。

第五章は、著者が作った長文読解問題に挑戦します。長文は二編あり、合計9問の問題と模範解答、解説が載っています。これは高学年向けの内容です。

第六章は、読解力を高めるのは試験でいい点をとるためだけではないという事、人間力を高める事が大事なのだという事が改めて語られます。

第七章は、いよいよおすすめブックリスト。小学生の内に読んでおきたい170冊がリストアップされています。低学年向けから高学年向けまで幅広く揃っています。よく名前を知られた名作が数多く、またこんな本知らなかったなというものについても解説を読むとなかなか面白そうでした。私は大変参考になりました。