著者 ドロシー・ロー・ノルト レイチャル・ハリス
訳 石井千春
発行 PHP研究所
初版 2003/9/17
対象 乳幼児~小学生
子どもが育つ魔法の言葉 の解説・感想
一昔前に世界中で大ヒットした本です。元々は著者の書いた一篇の詩が元になっています。その詩が作られたのが1954年だそうですから、今はこのような内容の本は数多く存在するかも知れませんが、その草分け的存在と言えるのではないでしょうか。
日本語のタイトルがちょっと誤解を招きやすいので注意してください。これだと『子どもにこんな言葉をかければいい子に育ちますよ』みたいな内容にとられかねません。ここで言う『魔法の言葉』とは多分詩のことを指しているのだろうと思います。英語のタイトルが『Children Learn What They Live』。拙い意訳だと『子どもにとって普段の生活こそが学びだ』でしょうか。こちらの方が本の内容に合っていると思います。
元の詩とは『子は親の鏡』という詩です。ネット検索すれば詩の内容は出てきますが、すべてが原文通りというわけでもないかも知れないのでその点はご注意ください。本書は安価な文庫本も出ていますから、間違いのない内容を見たいなら買ってしまった方がいいかと思います。著者も詩の細かい表現は適切と思われる方向に時折書き換えてきているようです。
当時のアメリカでは子どもを厳しく叱る事が親の役目だと考えられていて、そのような風潮の中で子育てに悩む親御さんのために著者が詩を作ったのだそうです。本書の「はじめに』を見ると、著者は家庭や教育についての活動家だったようですね。新聞に家庭生活についてのコラムを連載したり、地域の公開講座で講義を行ったり、保育園で子育て教室を受け持ったりしていたようです。
この詩は20の段落からなります。一つ一つの段落について、事例を交えながら詳しく解説をつけたのが本書です。内容はまさに『子は親の鏡』という事。日頃の親の行動や態度が子どもを教育しているのであり、親としてはこうありたいですねという指針です。ガチガチの指導ではなく、多くの人が共感できるような内容です。そんな事当たり前だろ、という方もおられるでしょう。内容についても、わかりきった事だという方もおられるでしょう。そういうしっかりされている方は読む必要はないかも知れません。
読者によっては詩の内容を逐一吟味していくとそれは科学的に妥当と言えるのか?と疑問を持つ点もあるかも知れません。例を挙げるとこの一節。
広い心で接すれば、切れる子にはならない
これは本当にそうか?と改めて厳密に問うと、言い切るのはちょっとどうかという気もしてきます。でも本書はそういう読み方をするものではないと私は思います。本書は大きな指針を掲げているのであって、実生活の中で親御さんがその都度適切な行動につなげていけるように、あるいは日頃の行動をふと立ち止まって見直す事ができるように、役に立てばいいのだろうと思います。
内容は概ね納得できるものですが、ただ一つ心配があるとすれば、この本を読んで『親はかくあらねばならない』と自分を縛りすぎてしまうと、ただでも大変な子育てがさらに辛いものになってしまう可能性もあるでしょう。その点巻末の『推薦のことば』にいい記述がありました。
あなたは、きっとそのままでも十分によい親御さんだと思います。でも、本書を読み進める内に、今以上によい親になれると気付かれ、微笑まれるに違いありません。
このような読み方が最適なのだと思います。
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