文 こいでたん
絵 こいでやすこ
発行 福音館書店
初版 1987/11/
対象年齢 2歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

ゆきのひのゆうびんやさん のあらすじ・内容


雪降る冬の寒い日、暖炉の前でトランプ遊びに興じる3匹の子ネズミ達。

そこへ郵便屋のうさぎさんがおばあちゃんからの小包を届けてくれます。そして次の配達先へ向かおうとしますが、うさぎさん、風邪をひいてとても具合が悪そうです。

3匹はうさぎさんの代わりに残りの郵便物を配達しようと出掛けます。風は冷たいし雪も降っていますが最初は順調に配達を続けます。一軒目のリスさん、二軒目のタヌキさんは無事荷物を届けました。三軒目のアナグマさんはもう冬ごもりに入っていたので郵便受けの中にハガキと小包を入れました。あとはキツネのおばあさんのところにリンゴの箱を届ければおしまいです。

ところが、その内に吹雪が強くなりとうとう荷物ごと吹き飛ばされてしまいます。

ゆきのひのゆうびんやさん の解説・感想


このシリーズは私のお気に入り


とんとんとめてくださいな』と同じ3匹のネズミのシリーズです。このシリーズは私のお気に入りです。今回もちょっとしたドキドキエピソードも交えながら優しく心温まるようなお話が展開します。

子どもが子どもらしく大人が大人らしい


相変わらずこの3匹のネズミは可愛いです。いたずらっぽさ、申し訳無さなど、その時々の感情が素直に表情に出ていて、健全な子どもらしさが感じられて応援したくなってしまうのです。それぞれの絵の場面に登場する動物たち一匹一匹の心情を考えられた上で描かれているんだろうなと思います。このシリーズに限らずこいでたんさん、こいでやすこさんの作品は、子どもが子どもらしく、大人が優しく心の広い大人らしい態度です。子どもにもいい影響があると思うのです。

描き込まれた絵には発見が


他にもこいでやすこさんの絵には大抵、文章には書かれていない小さなドラマやちょっとした仕掛けなどが隠れていて、それを見つけるのもまた楽しみの一つです。絵の隅から隅までよーく見てみましょう。本作では隠れているりんごを見つける趣向などが含まれていましたよ。

多くの小さな非日常が好奇心を刺激


メインのストーリーに沿って、マフラーを着けた暖かそうな姿、荷物を届けるという事の意味や、冬の猛烈な吹雪、そりの楽しさなど、盛り込まれた数々の子どもにとっての非日常が好奇心を刺激しそうです。

今後も読みつがれていってほしい


こいでやすこさんは2010年に亡くなられているのですね。作品は派手さはありませんが、良質なものばかり。よくよく練られている事、読者の子ども達が喜ぶ姿を想像して描かれている事が伝わってきます。やや薄めに描かれた独特のタッチは温かみがあり手作り感があり、家庭的な雰囲気を持っています。世界観にしっかりした筋が通っていて、ディテールにもこだわっていて、その辺りアニメーションの宮崎駿さんとどことなく共通しているものも感じます。もう新しい作品を見ることはできませんが、これまでの作品が今後も読みつがれていくといいなと思います。