著者 相良敦子
発行 文藝春秋
初版 2007/8/1
対象 乳幼児

お母さんの「敏感期」 の解説・感想


モンテッソーリ教育の概要を説明している本です。本格的に学ぼうとしたら、もっと専門的な書籍を読まなければいけないと思いますが、この本では教育者ではなくお母さん自身がモンテッソーリ教育のエッセンスを知り、乳幼児の子育てに役立てていく事を目的としているのだと思います。

本書を読んでみて感じましたが、モンテッソーリ教育の事を知っているか否かで、親御さんが普段の生活において子どもの能力向上の邪魔をするかあるいは手伝いをしてあげられるか、大きく違ってくるだろうと思われます。そしてそれは子どもの将来を変えてしまう可能性さえあります。非常に重要な知識です。また親御さんにとっても、子どもの不可解なところ、強情なところなど、手を焼いていた事が、別の視点から見られるようになり、子育てが楽しくなってくる面もあろうかと思います。私は正直なところ、もっと早く知りたかったと思わずにはいられませんでした。

私自身モンテッソーリ教育についてはこの本を読んだばかりでそれ以外の知識を持ち合わせていません。なので非常に乱暴ではありますが、その前提でモンテッソーリ教育とは何かと簡単に言いますと、子ども自身が本来持っている学習能力が発現する期間(これを敏感期と呼ぶ)に、子どもに存分に集中してもらうための教育法です。

ここで言う教育とか学習能力とかいう言葉の対象は、いわゆるお勉強ではありません。それよりももっと基礎的なものです。この本で紹介されているものですと例えば、五感を磨く、体を自在に動かす、秩序感を大切にするといった能力の獲得・向上です。これらは社会において必要な能力の土台となります。そして、これらの事を身に着けていく過程において、自立心や集中力が身につくとされています。

本書のタイトルに『お母さんの』という言葉がついている意味は本書を読んでみてわかりました。敏感期というのは本来子どもの学習能力が発現する時期のことなのですが、お母さんも子どもを育てていくという事に関しての敏感期があるはずだという著者の考えが本書には反映されているのです。そしてその敏感期をより充実したものにしていくためのお母さんの心構えが説明されています。その中でも最も重要な事は、子どもの表情を注意深く見ることとされています。詳しくは本書を読んでみてください。大いに納得できることと思います。

モンテッソーリ教育を実践している保育園の保母さんが考え出した手作り教材の例なども紹介されています。

本書はかなりおすすめです。子どもをのびのびと育てたい親御さん、そして教育熱心であるが故にかえって間違った方向に子どもを導きかねない親御さんなどにもぜひ読んでいただきたいと思います。