著者 松岡享子
発行 文藝春秋
初版 1987/9(単行本発行日)
対象 乳幼児~小学生
えほんのせかい こどものせかい の解説・感想
著者の松岡享子さんは絵本作家であり、翻訳家であり、児童文学研究家でもある方です。本ブログでも著書『おふろだいすき』をご紹介しています。
子ども向けの私設文庫や子ども図書館を設立したりもされており、絵本そのものだけでなく、子どもに本を読み聞かせるという行為についても知識・経験が豊富なのだろうと思われます。
私はこの本を読んで、なるほどそういう事だったのかと思わず『ガッテン』した事が数多くあります。例えば、子どもは絵本の中で同じパターンの繰り返しがあるのを好みますがこれは何故なのか。またよく書店のラックに並んでいる名作童話をアニメ調の絵で短い絵本に仕立てた安価な商品の何が悪いのか。要するに私は子どもはどんな風に絵本を見ているのか楽しんでいるのかという事を子供の立場からよくわかってなかったんですね。そこのところに気づきを得られたのが一番の収穫でした。読者はまだ知的な経験が少ない子どもなんですよね。そしていい絵本だと評価される作品や、ロングセラーで版を重ねる作品が、どんなに読者である子どもの事を考えられて作られたのかその一端を知ることができました。このような知識はいい絵本を選ぶためのベースにもなるでしょうし、それを知ることで多分読み聞かせの仕方も違ってくるのではないかと思います。またもし絵本を自分で作ってみたいという夢を持っている方がおられたらぜひ本書を読んでおいた方がいいと思いますよ。
この本の内容で印象に残った私の好きな一文はこれです。
子どもに本を読んでやるとき、その声を通して、物語といっしょに、さまざまのよいものが、子どもの心に流れこみます。
『さまざまのよいもの』とは何なのでしょう。是非本書を読んで確認してください。お子さんに本を読んであげることがより楽しく幸せで濃密な時間になると思いますよ。
他に本書で語られている事を一部ご紹介しますと…
- 一番いい読み聞かせの方法とは。
- 絵本は楽しむもの。お勉強にしてしまうと失われること。
- 子どもがわからない言葉が出てきたら。
- なぜ絵が大事なのか。
- 絵本におけるいい文章とは。
- いい絵本とは何か。それを見分ける方法。
この他にも複数の子どもに対して読み聞かせをする時のやり方・注意点や適した絵本の紹介(なんと親切にも作品ごとに読み聞かせ方の注意点なども書かれています!)などもされています。この辺は図書館や保育園などで読み聞かせをする人に役立つ知識ですが、一般のお母さんにも参考になるところがあると思います。
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