著者 サリー・ウォード
発行 小学館
初版 2001/7/20
対象 0~4歳

「語りかけ」育児 0~4歳 わが子の発達に合わせた 1日30分間 の解説・感想


もしかしたら子育てに関する本ではとりあえずこの本だけ読めば最低限の範囲で十分なんじゃないかという気がしました。色んな育児本に共通して書かれているようなエッセンスが具体的な形で反映されているからです。

それと非常に実用的で有用な本です。分厚い本ですが、なぜこんなにも分厚くなったかと言うと、0~4歳までの期間をさらに数ヶ月単位に分割し、それぞれについて語りかけ育児の具体的やり方、やってはいけない事、間違えやすい事、有用な遊び方やおもちゃ、その時点での発達の遅れを見分ける兆候など、事細かに記されているからです。重要なポイントは前の期間に書いてあったことでもしつこいほど繰り返し説明されます。ですから分厚いと言っても一度に最初から最後まで読む必要はまったくありません。最初の概要説明を読んだらあとは子どもの年齢・月齢に合わせて該当する部分だけ読めばいいのです。

語りかけ育児とはそもそも何なのか。ご存じない方にご説明しますと…。毎日30分、親と子の二人だけのお話の時間を作るということ。この事が言語能力の発達はもちろん、知能の発達、自己肯定感の醸成、情緒の安定、社会性・生きていく力(非認知能力)の発達を促していく効果があるのです。著者のサリー・ウォードさんはイギリスの言語治療師です。言語能力の発達に問題がある子どもを手助けする仕事ですが、その仕事の中でこの語りかけ育児が言語の発達だけでなく子どもの能力向上や精神面の安定に寄与することを見出しました。この語りかけ育児はイギリスでは政府が推奨するほどの扱いとなっています。

単なるハウツー本というだけでなく、子どもがどのように大人と同じような能力を獲得していくのかというその過程も解説されています。この辺りは私にとって目からウロコの内容でした。例えば、街なかで誰かと会話をするとします。喧騒の中から相手の声を選択して聞き取り、話す相手を認識して相手の顔を見る。これらの事が最初は子どもにはできないんです。必要な音だけに集中し、視覚と聴覚が連動するにはそれなりの経験が必要なのです。そういう事を知っていると思う通りにならない子どもにイライラすることも減るんじゃないかと思います。語りかけ育児が子どもにとって能力向上だけでなく精神の安定に寄与するのと同じように、この本は親御さんの精神面もサポートしてくれる効果があるものと思います。

この本は出産前から読むといいですよ。この位の月齢の子どもはこんな事ができるようになるとか事細かに書いてあり、それを読むと赤ちゃんと出会うのがそれまで以上にとても楽しみに待ち遠しくなると思います。

kindle(amazonの電子書籍)だと無料のお試し本も出ています。ちょっと読んでみて気に入ったら本編を購入されてもいいと思いますよ。