作 ジュディス・カー
訳 晴海耕平
発行 童話館出版
初版 1994/9/15
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明 2010年で第20刷
オススメ度 B

おちゃのじかんにきたとら のあらすじ・内容


女の子ソフィーがキッチンでお母さんとお茶にしようとしていた時、玄関のベルがなりました。

さて誰でしょう?お母さんもとんと見当がつきません。いざ玄関のドアを開けてみるとそこには大きなトラが。お腹が空いているので一緒にお茶をさせて欲しいというのです。お母さんはいいですよ、とトラを招き入れます。

ところがあまりにトラの食べっぷりがよくて家中の食べ物がなくなってしまうほどです。

おちゃのじかんにきたとら の解説・感想


品よくお洒落な雰囲気


この本は全編を通じて登場する人達の品の良さと優しさがとてもいい雰囲気を醸し出しています。服装や絵の色使いもとってもお洒落です。作者は元々ドイツで生まれた方ですが、ナチスの手を逃れて最終的にイギリスで家庭を持ったようです。なんとなくソフィーの一家は昔のイギリスの比較的豊かな中流家庭(?)みたいなイメージを感じさせます。

鷹揚で優雅なトラの魅力にソフィーも魅せられる


トラはまあこの食べっぷりはいくらなんでも失礼だろうとは思いますが(そこはトラだからということで許していただいて)それ以外は基本的に慇懃且つ鷹揚な態度。見た目も優雅(このトラの絵は毛並みの艶やかさまで感じられるんですよね)で、ソフィーはこのトラがいたく気に入った模様。ずっとトラの様子を見つめたり、頬ずりしたりしています。大人からするとあまりに荒唐無稽な展開で、お母さんとソフィーの反応を不思議に思うでしょう。でも、危険がないのであれば子どもはこんな反応が自然なのかも知れないし、読者の子どもも普通に感情移入してソフィーと同じように素敵なトラを気に入るかも知れませんね。裏表紙には(ストーリーとは直接関係ありませんが)ソフィーがトラにまたがって散歩しているカットがあって、これなんか羨ましく感じちゃうんじゃないかな。

粋なお父さん


作品の過半がこのトラの様子を追うことに費やされますが、最後に粋なエピソードが待っています。トラが帰った後、お父さんが食べ物も飲み物もまったくなくなった我が家に帰宅してからの態度は素晴らしくて、世の奥様方はこれこそ主人たるものの態度と喝采を送るかも(笑)いずれにしてもこの家族はみんながみんな、言葉遣いや仕草や表情、態度などに好感が持てる人達ですね。

絵はカラフルだし可愛いですよ。描き込まれているという感じじゃないし、余白も多いのですが、すごくセンスがいいんです。(お前にセンスを語る資格があるのかというご批判はごもっともですがご容赦を。)

初版が1994年ですがこれは改訂新版です。これ以前の版に関してはまったくデータはありません。でも改訂版が出てそれもまた版を重ねていることからしてロングセラーと言っていいのではないでしょうか。