作 ウィリアム・スタイグ
訳 せたていじ
発行 評論社
初版 1975/10/30
対象年齢 6歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

ロバのシルベスターとまほうの小石 のあらすじ・内容


ロバのシルベスターはお父さんお母さんとの3人暮らしです。彼は変わった形や色の小石を集めるのが好きです。

ある日シルベスターはまん丸で赤い変わった小石を見つけました。そして偶然にその小石が何でも望みを叶える魔法の小石であることを発見します。

いいものを見つけたと喜んで帰宅する途中、ばったりとライオンに出会ってしまいました。慌てたシルベスターは「僕は岩になりたい」と言ってしまいます。ライオンの危険はそれで避けることができましたが、大問題なのは元に戻れないことです。小石に触れていないと元に戻るための魔法はかけられないのです。岩になったシルベスターは小石に触れることはもちろん動くこともできず家に帰れません。

やがてシルベスターが帰ってこないことに気づいた両親は心配し始めます。

ロバのシルベスターとまほうの小石 の解説・感想


暖かい家族愛を感じさせてくれる絵本です。子ども向けですから感動巨編みたいなものじゃないですよ。登場人物がすべて動物という事もあってリアルになりすぎないということもあると思います。しみじみとほのぼのと味わう作品です。

シルベスターが岩になってしまったのが夏。そのままの状態で秋になって冬が過ぎて春になってしまいます。すごく長いんです。その間シルベスターの孤独と両親の悲しみはずっと続きます。それだけに最後のハッピーエンドでは家族の幸せが心に沁みてきます。

読者のお子さんはシルベスターに自分を重ねてみて、「〇〇(自分)がいなくなったらお父さん(お母さん)どうする?」と再確認したくなるかも知れませんね。お父さんお母さんの気持ちを優しく伝えてあげたいですね。

そしてまた読み聞かせる親御さんは…。この本はかなりのページ数を使ってロバの両親がシルベスターを探し回ったり苦悩したりする様子を描いています。ことにお母さんロバの流す涙はとても気の毒です。特別感情移入しやすい親御さんはロバの両親の気持ちがわかりすぎて少々胸が詰まったり、最後にシルベスターが戻った時は一緒にウルウルしてしまうかも知れません。

魔法の小石なんて手にしたら普通は欲が表に出てきそうですが、このロバの家族はみなその事に重きを置いていません。シルベスターの場合は小石で魔法が使えることを知った時、自分が何に使おうかということは全然考えないんですね。お父さん、お母さん、親戚や友達に好きなことをさせてやろうと考えるのです。魔法よりもっと大事なものを既に持っているのです。そして両親もその小石を使おうなんて全然考えません。なぜならもう満ち足りているからです。幸せな家族です。

本の写真の帯を見ていただくと『新版』と書かれていますね。2006年にこの新版が出ましたが、国内での初版は1975年。この時期にして新版が出るということはずっと愛され続けているということですよね。

因みにアメリカでは1969年に出版され、コールデコット賞を受賞しています。

他にもコールデコット賞を受賞した作品を紹介しています。 → コールデコット賞