作 マーシャ・ブラウン
訳 うちだりさこ
発行 偕成社
初版 1984/1/1
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 A

ちいさなヒッポ のあらすじ・内容


ヒッポは小さなカバの子です。生まれた時からずっとお母さんと一緒です。大きなお母さんのそばにいさえすればヒッポは怖いものなどなく安心していられるのです。

カバが住んでいる周辺には美しい鳥やワニ、シマウマ、水牛なども住んでいます。カバは群れで過ごしています。昼は暖かい場所で眠り、夕方になると草地へ行って一晩中草を食べます。

ヒッポはお母さんからカバの言葉を習い始めました。子どもにとって「グァオ!」と大きく吠えるのが大事なのです。

ある日ヒッポは大人たちが寝ている時に一人離れて遊ぼうとします。そこへワニが近づいてきました。ヒッポは叫ぶ暇もなく尻尾に噛みつかれてしまいます。

ちいさなヒッポ の解説・感想


三びきのやぎのがらがらどん』でも迫力ある絵というところは共通していますが、同じ作者でもこちらは版画ということもあってか画風がだいぶ違いますね。まずはとにかくその美しさが特徴です。表紙をめくって見返しのところに、夕暮れ時に水面から目だけを出して移動するカバの群れとその上を翔び過ぎる大きな鳥の群れの絵がありますが、濃厚で生々しい自然の空気が感じられ、飾っておきたくなるような美しさです。美しいだけでなく、ワニとお母さんが戦うシーンなどは思わず力が入るような迫力もあります。どの絵も活き活きしています。色使いのせいかな、何故か若干和風な感じもします。

ヒッポはちょうど読者になるであろう4歳位の子どもと同じような存在です。お母さんに守られて、そして社会を自分の足で歩けるように厳しい教えを受け、時には冒険をして、危険があればお母さんに助けられ、少しづつ少しづつ成長していく過程なのです。だからヒッポの気持ちは子どもには自分のことのように思えるかも知れません。大人の中には本書がとりたてて何ということもない退屈な話のように思われる方も多いと思います。実を言いますと私も最初の印象はそうでした。でも読み聞かせてみるとお子さんの反応は全然違うかも知れませんよ。

これなら子どものヒッポは安心していられるわな、と納得できるほどにヒッポのお母さんは大きくまた力強く表現されています。ヒッポが襲われた後の2コマの絵なんかもう迫力すごいですよ。まさに母は強し。読者の子どももかぶりついて見るかも。それにお母さんという大きな存在を再認識して安心もできるかと思います。

ヒッポはお母さんに助けられ無事です。残虐な事になったりかわいそうな事になったりはしませんのでご安心ください。最後にお母さんにお小言を言われ「グァオ!おかあさん!」(多分人間で言うと「はいっ!お母さん!」)と大きい声で答えるところがまた人間の子どもみたいでかわいいです。読者の子どもも(本作を読んだ直後だけ)お母さんの言うことを聞こうと思うかもね(笑)

原書は1969年出版と古いです。長く愛されてきた絵本です。