作 マージョリー・フラック
絵 同上
訳 瀬田貞二
発行 福音館書店
初版 1974/7/15
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

アンガスとあひる のあらすじ・内容


ある家にアンガスというスコッチ・テリアの黒い子がいました。アンガスは好奇心旺盛で何でも知りたがりました。ソファの下には何がいるんだろうとか。鏡に映った子犬は誰だろうとか。

家の外にも興味がありました。生け垣の外から聞こえてくるあの「ガー、ガー、ゲーック、ガー!」という音はなんだろう。でもいつも首輪につながった革紐に引っ張られるのでよく調べることができません。

ある日、チャンスが訪れました。玄関のドアが開いていて、革紐もつながっていません。アンガスは外に飛び出し、生け垣をくぐりました。

そこにいたのは二羽の白いアヒルでした。アンガスは吠えながらアヒルに向かっていきます。アヒルたちは逃げ出しました。

アンガスのちょっとした冒険のお話です。

アンガスとあひる の解説・感想


アンガスは好奇心いっぱいの人間の子どもそのものです。だからこの絵本を読みながら読者の子どももアンガスと一緒に冒険することになるかも。だって初めて子どもがあひると遭遇したら、ちょっとビビったり、触ってみようかとこわごわ近づいてみたり、真剣になると思うんですよ。大人にとってはとるに足らない冒険と映るかも知れませんが、子どもにとっては大冒険じゃないでしょうか。

すべての絵がアンガスの低い目線で描かれています。また文中の表現もあくまでアンガスの立場にたってるんですね。革紐に関しては、こっち側は首輪につながってあっち側は誰かの手が握っていると書かれています。飼い主の人間さえ描かれません。あくまでのアンガスの見るアンガス主体の世界なんです。だから子どももアンガスのつもりになって楽しめるんじゃないでしょうか。

その後、さらに紆余曲折を経てアンガスはアヒルの逆襲に遭い、ほうほうの体で逃げ帰ります。そして『ソファの下に潜り込み、三分の間何事も知りたいと思わなかったのです』。この場面には二つほどクスッと思わず笑ってしまうようなところがありました。まずは、以前に何がいるだろうと探っていたソファの下に何のことはない自分が潜り込む羽目になったこと。もう一つは三分たったら恐らくアンガスはまた性懲りもなくそこらを探って回るであろうと想像できること。子どもが気付くかどうかわかりませんけど、微笑ましいラストです。

スコッチ・テリア(あまり犬に詳しくないので恐縮ですが多分スコティッシュ・テリアと同じと思います)は、活発で負けん気が強いのが特徴だそうです。アンガスもそんな感じでしたよ。

本作の原書は1930年でアメリカで出版されました。昔のアメリカの絵本で今も変わらずに残っている作品は良質なものが多いですね。現代の多くの商業的な絵本と違い、子どものために子どもの目線で大人の知識と愛情で描かれた真心を感じる作品が多いです。

対象年齢は実際の本に書いてある通りに4歳からとしたのですが、どうでしょう。お話がすごくシンプルなので3歳位でもいいような気がしますけどね。

本書と同じような子どもの冒険を描いた絵本を他にもご紹介しています。→ タグ『冒険