作・画 ルドウィッヒ・ベーメルマンス
訳 瀬田貞二
発行 福音館書店
初版 1972/11/20
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 46
発行部数 不明
オススメ度 B

げんきなマドレーヌ のあらすじ・内容


パリの寄宿学校で暮らす12人の女の子。先生のミス・クラベルと共に食事をしたり散歩に出たりいつもみんな一緒に過ごしています。そんな中でも一番小さくて元気いっぱいなのがマドレーヌです。マドレーヌはスキーやスケートが得意で、ねずみや動物園の虎もへっちゃらです。

ある晩のこと。何やら異変に気づいたミス・クラベルが子ども達の寝室に行ってみると、マドレーヌがベッドの上で泣いていました。早速コーン先生が診察に駆けつけるとどうやら盲腸炎のようです。マドレーヌは救急車で運ばれ病院へ。

マドレーヌが気がつくと、そこは病室で目の前に花が飾ってありました。

寄宿学校の生活の様子やマドレーヌの手術にまつわる出来事などを追ったユーモアのある可愛らしい絵本です。手術のエピソードがありますが、暗い要素などはまったくなくて、むしろ楽しい出来事になっちゃってます。

げんきなマドレーヌ の解説・感想


本作はマドレーヌのシリーズの記念すべき第一作となる絵本です。シリーズ化するという事は人気があるという事ですし、本作はコールデコット賞も受賞しているのです。実写映画やアニメーションにもなっています。

元気な女の子マドレーヌのキャラクターが一番の魅力ですね。マドレーヌのキャラクターグッズなんかも出ていて、ちゃんと手術痕もついてたりするらしいですよ。

ちょっと独特の絵本です。ストーリーで惹きつけたりとか、主人公の気持ちを追うとか、盛り上げるとか、そういうのはあんまりありません。全然ドラマチックではないです。大してドキドキもしません。言ってみれば子どもの絵日記に近いように思います。あれをやって次にこうなってと細かい事まで含めて順を追って説明してるみたい。でもって絵の方も全然写実的ではないです。でもそれが子どもの感覚に合うのかも知れないですね。文章がとても少ないので大人はどんどん読み進めたくなるかも知れませんが、ゆっくりじっくり1ページづつ子どものペースに合わせて読んであげて欲しいと思います。

この本は子どもの視点・気持ちで描かれたようなシチュエーションが何度か現れます。病院のベッドがハンドルで上下できるようになってるところとか、天井の染みや割れ目がうさぎに見えるところとか、子どもじゃないとこんな事には目もくれないでしょう。マドレーヌがお見舞いに来た女の子達に手術の痕を見せて自慢したり、その女の子達がそれを羨ましがったりなんて、これも子どもらしくて微笑ましいです。

お友達と一緒に過ごす寄宿学校の生活は、もしかしたら子どもにとって新鮮に映るかな。

ページ数は46もあるんですけど、長いとは感じないだろうと思います。文章は短いし、1ページで表現する内容がとてもシンプルなんです。極端な例ですが、真夜中にミス・クラベルが異変を感じて、子ども達への寝室に駆けつける場面。その駆けつけるというだけで3ページ使っています。多分子ども達が心配で早く駆けつけたくてもどかしい気持ちがそこに現れてるのと、今度は何?何?という読者を引っ張る意図があるんじゃないかな。これ以外も結構贅沢にページを使ってたりします。

作品中にパリの名所が時々描かれています。絵本の最後の端の方に、どのページにどこの場所が描かれているか簡単にまとめてもありました。パリの雰囲気を少し感じることができます。でも作者はオーストリア生まれのアメリカ人。旅行でパリに行った経験が反映されてるのでしょうかね。旅行中に入院した際に盲腸で入院していた女の子と出会った事がインスピレーションにつながっているそうなので、もしかした実際にこんな女の子がいたのかも。

実は絵本の裏には『4歳から』と書いてありました。寄宿学校(そういう言葉は出てきませんが概念は知らないでしょう)とか盲腸とか手術とか小さい子にはまったく未知であろうことが出ては来ますが、それはまあ教えればいいだけだし、4歳になったからわかるというものでもないでしょう。文字数が少ないしお話もシンプルでわかりやすいので、私は3歳からで問題なかろうと判断しました。