再話 マイケル・ローゼン
絵 ヘレン・オクセンバリー
訳 山口文生
発行 評論社
初版 1991/1/30
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 A
きょうはみんなでクマがりだ のあらすじ・内容
今日はみんなでクマ狩りだ。捕まえるのはでかいやつ。(お父さんと子ども4人(内一人は赤ちゃん)と犬一匹がクマ狩りにでかけます。)
草原に出た。長くてびっしり草が生えてる。通り抜けるしかないようだ!『カサカサカサ!』
川に出た。深くて冷たい川。通り抜けるしかないようだ!『チャプチャプチャプ!』
ぬかるみに出た。重くて湿った泥だらけ。通り抜けるしかないようだ!『ペタペタペタ!』
森に出た。大きくて暗い森。通り抜けるしかないようだ!『テクテクテク!』
吹雪だ。大吹雪。通り抜けるしかないようだ!『ピューピューピュー!』
洞穴がある。狭くて暗い洞穴だ。通り抜けるしかないようだ!『パタパタパタ!』「あれはなんだろう?」
きょうはみんなでクマがりだ の解説・感想
遊び歌が元になっている
突っ込もうと思ったらいくらでも突っ込みどころがあります。だってそもそも家族でクマ狩りっておかしいでしょ。赤ちゃんまで連れて。思い切り普段着で武器も持ってないし。でもいいんです。これは英語の遊び歌を絵本したものなのです。だからマイケル・ローゼンさんの『再話』という形になってるんですね。元々が遊び歌ですから楽しければ細かい事はどうでもいいんです。
読者も一緒に冒険すべし
で、何が楽しいかと言いますと、まずはクマ狩りの道中で難所がいくつかあるわけです。草の中を通り抜けたり、川を歩いて渡ったり。子どもはキレイな道を行くよりも変なトコを苦労していく方が楽しいしワクワクするんですよね。しかもそれぞれ『カサカサ』とか『チャプチャプ』とか擬音語・擬態語のみの文章がついています。この絵本のカバーにも書いてあったんですけど、本を読みながら親子で『カサカサ』草をかき分けて進んだり、『チャプチャプ』川を渡ったり、真似をしながら読んでいったら楽しいと思いますよ。
リズムの良さがワクワク感を増す
リズムもいいです。これも読者のワクワク感を増す要因の一つになっている気がします。
一つには文章の繰り返しのリズム。難所に行き当たる度にお決まりの勇ましい文句が繰り返されます。繰り返しは子どものテッパンですよね。その文章も五七調になっていて読んでて気持ちいいです。子どもも覚えちゃうかも。
それに場面展開もスピーディーでリズムがいいんです。難所に来て繰り返しの文章があって、その次のページには擬音語・擬態語とともに難所を越える様子が、そしてその次にはもう次の難所に行き当たって繰り返しの文章が、という風にリズムよくどんどん先へ進んでいくんです。この辺も気持ちいいですね。難所に行き当たってどうしようという場面はモノクロの絵なんですけど、難所を越えるところの絵は水彩のカラーになっていて、モノクロとカラーと緩急がついてるところもリズムを感じさせます。
アニメ化されています
実はこの絵本アニメ化もされていて、NHKで放送されたようです。
これは英語版のトレイラーですけど、絵本の絵にかなり忠実に作られてるみたいですね。
本当にクマに出会うのか
お話のその後ですけど…洞穴の中を進んでいくと、とうとう大きなクマが現れます。みんな一目散に逃げ帰ります。洞穴から吹雪を抜けて森、ぬかるみと来た時とは逆の順番で戻っていきます。その間もクマは追いかけてきます。そしてとうとう家に帰り着きましたが、クマも家の入り口まで来ています。鍵をかけて二階のベッドに潜り込んで「もうクマ狩りなんかにでかけない」と怯えながら決意表明して冒険は終わりです(笑)
クマの気持ちを考えてみるのも
クマなんですけど、最初に出現した時は目がギョロっとしてちょっと怖そうでした。でもその後は「一緒に遊ぼう」みたいな雰囲気も感じられるんですよね。なんかはしゃいで追いかけてくるようにも見えるし、家に近づいてくる時に生け垣の門をちゃんと開いて入ってくるし(笑)。裏表紙の見返しのところにはクマが一匹夕暮れの中を肩を落として帰っていく後ろ姿が描かれていて、それがすごく寂しそうなんです。この絵、お子さんと見てみてください。やっぱり遊びたかったんじゃないかな。
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