作 E.B.ホワイト
絵 ガース・ウイリアムズ
訳 さくまゆみこ
発行 あすなろ書房
初版 2001/2/10
対象年齢 小学校中学年高学年
ページ数 221

シャーロットのおくりもの のあらすじ・内容


8歳の女の子ファーンは朝食の準備を手伝っている時にお父さんが斧を持っていくのを見かけました。斧で何をするのか聞いてみると、昨夜生まれたブタの赤ちゃんの内1頭が小さすぎて商品にならないので殺すというのです。ファーンは泣いて止めました。そしてお父さんはしばらくその子ブタをファーンに世話させることにしたのです。

ファーンはその子ブタをウィルバーと名付け、大事に育てました。ミルクをやるのはもちろん、お人形と一緒にウィルバーを乳母車に乗せて散歩したり、川へお出かけしたり。ウィルバーもとても幸せでした。

しかしウィルバーが生まれて5週間がたった頃、お父さんはもうこの子ブタを家においておくことはできないと言います。。近所の農場ならファーンも時折見に行くことができるということで知り合いのザッカーマンさんの農場へたったの6ドルで売られることになりました。

ザッカーマン農場に来たウィルバーですが、時々ファーンが来てはくれるものの、狭い囲いの中で、遊び友達もいなく、『生きることにうんざり』してしまいます。そんな中、ウィルバーの事が好きになって友達になってくれるという者が現れました。それはクモのシャーロットでした。クモのシャーロットは自分でこしらえた網にひっかかった虫を食べて生きています。ウィルバーは残酷だなと思い、いい友達になれるだろうかと不安を感じました。

ある日、ウィルバーは羊のおばさんから、子ブタは冬には殺されて肉にされてしまうという話を聞きます。長年この農場にいるおばさんの話はどうやら本当のようです。ウィルバーは泣き出しました。そして賢いシャーロットは、自分がウィルバーを助けると宣言します。

シャーロットのおくりもの の解説・感想


この本の帯にはこう書いてありました。
子ブタとシャーロットの、かけがえのない友情を描いた児童文学の最高傑作!23カ国、4500万部超の世界的ロングセラー

元々の原作は1952年に発表されており、現時点でも新品で入手可能な息の長い本当にロングセラーの作品です。

この本で最も大きなテーマは『友情』です。シャーロットは自分ができる範囲で思いがけない方法でウィルバーの命を救おうとします。なんの見返りを求めるでもない、ただただ自分の友達を救おうとするのです。物語が佳境に入った時、ウィルバーがシャーロットに尋ねます。自分は最初の内シャーロットを残酷な生き物だと思っていたし、そもそも自分はシャーロットに対して何もしてあげられない。それなのになぜこんなに色々としてくれるのかと。それに対するシャーロットの返事がとてもいいのです。私自身人の生き方について考えさせられるものがありました。

読者の子ども達には、慎み深く品があって、最後までウイルバーに誠実に接しつづけたシャーロットの姿を見ていただきたいと思います。シャーロットに対比するように自己中心的なネズミのテンプルトンというのも出てくるのですが、この姿もまた見て欲しいと思います。

表紙を見たら誰だって女の子がシャーロットだと思うでしょう。実は表紙にもほんの小さくクモのシャーロットが描かれています。なんでまたシャーロットがクモなのでしょう。シャーロットはクモにしかできない方法でウィルバーを救おうとするのですが、しかしそれ以上にシャーロットがクモであった必然性が別のところで感じられました。ようするにシャーロットは自分が置かれた場所でキレイに咲こうとしていたのだと思います。だからこそ一見残酷で、狭い範囲でしか生きられず、小さく容姿も美しいとは言えない、クモだったのだろうと思います。私は本書を読んでから現実の『クモ』を見る目がちょっと変わってきましたよ。

また他のテーマとして『』というものもあります。この物語は最初のスタート時点からラストシーンまで『命』が色んな角度から描写されます。まず初っ端からウィルバーが生まれてまもなくファーンのお父さんに斧で殺されるところだったこと。そして助かったのかと思ったらその後農場で再び殺される運命にあったこと。その他にガチョウの卵の内一つが孵らずに腐ってしまうこと。クモが虫を捕食すること。シャーロットの寿命のこと。シャーロットが卵を産み子どもたちが誕生すること。美しく、また綺麗事だけでもない様々な命、生と死が描かれています。

ファーンは当初主人公かと思うくらい活躍します。ウィルバーが農場に移ってからも、頻繁に農場に通い、動物たちの会話を楽しんで聞いています。でも数年後にはもう毎日は農場に来なくなっています。文章によると”大きくなって子どもっぽいことはしないように気をつけていた”からです。物語の終盤ではボーイフレンドができて少しづつ大人へと近づいていることを感じさせます。寂しい気がしますが、子どもの世界から羽ばたいていくのでしょうね。でも子どもの世界も心のどこかで忘れないでいて欲しいとも思います。

本作は何度か映画化もされています。下は2006年の映画の予告編です。



外国の文学は特に会話など日本人と違ってあまりに饒舌すぎて感情移入しにくいという事もあるかと思います。本作でも私はそういう感じを若干受けました。また自然の美しい描写が所々にはさまれるのですが、そういうものに親しめない読者は飽きてしまうかも知れません。字数もやや多いですし、ある程度文章を読むことに慣れたお子さんに適した作品かも知れません。