文 マーガレット・W・ブラウン
絵 クレメント・ハード
訳 いわたみみ
発行 ほるぷ出版
初版 1976/9/20
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ~やや少なめ
ページ数 40
発行部数 不明
オススメ度 B
子うさぎはある日家を出てどこかに行ってみたくなりました。そこで母さんうさぎにこう言います。「ぼくにげちゃうよ」
すると母さんうさぎはこう返します。「お前が逃げたら、母さんは追いかけますよ。だって、お前はとってもかわいい私の坊やだもの」
すると子うさぎはこう言います。「母さんが追いかけてきたら、僕は、小川の魚になって、泳いでいっちゃうよ」
それに対して母さんうさぎはこう言います。「お前が小川の魚になるのなら、母さんは漁師になって、お前を釣り上げますよ」
こうして母子の会話は続きます。
「母さんが漁師になったら,僕は母さんよりもずっとせいの高い山の上の岩になるよ」
「お前が高い山の岩になるのなら、母さんは、登山家になって、お前のところまで登っていきますよ」
「母さんが登山家になったら、僕は庭のクロッカスになっちゃうよ」
「お前が庭のクロッカスになるのなら、母さんは、植木屋になって、お前を見つけますよ」
こうして母子の会話はまだまだ続きます。筋で読ませるお話ではありません。
この母子の会話は現実の世界でもありそうな気がしませんか。そう言うと何だか誰にでも考えられるようなありふれた内容だという風に聞こえるかも知れませんが、そういう意味ではなくて、子どもの考えそうな事、言いそうな事がそのまんな絵本になってる感じがするのです。大人からすると他愛もない内容に見えるかも知れませんが、子どもには次々と想像を拡げていくのが楽しいだろうし、お母さんがそれに対抗して切り返してくるのも楽しいでしょう。親の愛情を確認できる意味合いもあるのではないでしょうか。この絵本を読むのもいいのですが、実際にもたくさんこんな風に親子の楽しい掛け合いの会話をしたいと思います。
子どもが外に興味を持ったり自分で何かをしたいという意欲を持ったり、そういう一種の独立心は家といういかなる状況においても安心できる場所があってこそでしょう。表裏一体のものなのだろうと思います。そしてその表と裏が一緒に表されているのがこの絵本だと思います。
最終的にこの母子の会話がどこに行き着くのかと言いますと…。子うさぎはこう言います。「僕は人間の子どもになって、お家の中に逃げちゃうよ」それに対して母うさぎはこう言います。「お前が人間の子どもになって、お家に逃げ込んだら、私は、お母さんになって、その子をつかまえて抱きしめますよ」子うさぎは、結局家にいて母さんの子どもでいるのを同じであるという結論に至ります。そこで母うさぎは最後にこう言います。「さあ、坊や人参をおあがり」木の根元のお家の中で子うさぎは母うさぎから人参をもらいます。まだ小さい子どもにとって大事な絵本の要素『安心』が、盤石な母うさぎの愛情によって示されるいい絵本です。
見ようによっては、子離れできない母親が子どもを離さない話のようにも思いますね(汗)。でももちろん作者の意図はそこにはないでしょう。今回は結局子うさぎが逃げちゃうことはありませんでしたが、こういう風に「出ようかな」「ちょっと出てみよう」「また戻ってきた」というような事を何度となく繰り返して少しづつ親離れしていくのでしょうし、まだ最初の段階なのでしょうね。そして母うさぎは、出ていっても必ず連れ戻すというような意図はまったくなく冗談半分の返答でしょうし、あくまでもいつまでも子どもを見守る母の愛情を示しているだけなのでしょう。でもそういう補足的な説明や匂わせは一切ないので、怖い母親だと感じたとしてもまったくの間違いではないよなという気もしないではないです。
絵は一貫して面白い構成になっています。子うさぎのセリフのところでモノクロで描かれた子うさぎの絵が1ページ。それに対する母うさぎの返答でモノクロで描かれた母うさぎの絵が1ページ。そして次に見開き2ページに渡って、母うさぎのセリフ通りの情景が文章無しでフルカラーで描かれます。例えば高い山で岩になっている子うさぎ目指して登山している母うさぎが描かれるわけです。頭で想像していた世界がパッと眼の前に現れるわけで、思わず見入ってしまいます。ただ、美しく描きこれた絵なのですが、若干ファンタジー色が強くてシュールに見えてしまう人もいるかと思います。私がそうでした。子うさぎが鳥になる場面では、うさぎに羽が生えて飛んでるし、止まろうとしている木は母うさぎの形をしています。これがコミカルな絵ならばそうでもないと思いますが、リアルな調子の絵なので、特に敏感な子どもは奇異な印象を持ってしまうかも知れませんね。子どもによるでしょうけど。因みにこのカラーのページでは、どこに子うさぎがいてどこに母うさぎがいるのか、探すという楽しみ方もできると思います。
本書の原書は1942年にアメリカで出版されています。なんと古い!でみ未だに普通に購入可能。ずっと愛されて残ってきた絵本なんですね。
出版社のサイトで調べてみると、この絵本の対象年齢は『2・3歳から』ということになっているようです。私は2歳にはちょっと早いような気がして『3歳から』としてみました。漁師とか登山家とか新しい概念が色々出てきてあまり小さい子どもには若干とっつきにくいような気がしたからです。
この絵本のように母と子どもが対話をするというシチュエーションの絵本を他にもご紹介しています。 → 『いいこってどんなこ』
この絵本とはほとんど関係ないんですけど、母と子のコミュニケーションという意味で超おすすめの漫画があります。近々この漫画もご紹介しようと思っています。この絵本の作者さんは子どもの気持ちを理解できる才能がある人だなと感じましたが、この漫画の作者さんもなかなか。育児中のお父さんお母さんに読んでいただきたいです。
絵 クレメント・ハード
訳 いわたみみ
発行 ほるぷ出版
初版 1976/9/20
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ~やや少なめ
ページ数 40
発行部数 不明
オススメ度 B
ぼくにげちゃうよ のあらすじ・内容
子うさぎはある日家を出てどこかに行ってみたくなりました。そこで母さんうさぎにこう言います。「ぼくにげちゃうよ」
すると母さんうさぎはこう返します。「お前が逃げたら、母さんは追いかけますよ。だって、お前はとってもかわいい私の坊やだもの」
すると子うさぎはこう言います。「母さんが追いかけてきたら、僕は、小川の魚になって、泳いでいっちゃうよ」
それに対して母さんうさぎはこう言います。「お前が小川の魚になるのなら、母さんは漁師になって、お前を釣り上げますよ」
こうして母子の会話は続きます。
「母さんが漁師になったら,僕は母さんよりもずっとせいの高い山の上の岩になるよ」
「お前が高い山の岩になるのなら、母さんは、登山家になって、お前のところまで登っていきますよ」
「母さんが登山家になったら、僕は庭のクロッカスになっちゃうよ」
「お前が庭のクロッカスになるのなら、母さんは、植木屋になって、お前を見つけますよ」
こうして母子の会話はまだまだ続きます。筋で読ませるお話ではありません。
ぼくにげちゃうよ の解説・感想
楽しい会話が絵本に
この母子の会話は現実の世界でもありそうな気がしませんか。そう言うと何だか誰にでも考えられるようなありふれた内容だという風に聞こえるかも知れませんが、そういう意味ではなくて、子どもの考えそうな事、言いそうな事がそのまんな絵本になってる感じがするのです。大人からすると他愛もない内容に見えるかも知れませんが、子どもには次々と想像を拡げていくのが楽しいだろうし、お母さんがそれに対抗して切り返してくるのも楽しいでしょう。親の愛情を確認できる意味合いもあるのではないでしょうか。この絵本を読むのもいいのですが、実際にもたくさんこんな風に親子の楽しい掛け合いの会話をしたいと思います。
独り立ちは安心できる場があってこそ
子どもが外に興味を持ったり自分で何かをしたいという意欲を持ったり、そういう一種の独立心は家といういかなる状況においても安心できる場所があってこそでしょう。表裏一体のものなのだろうと思います。そしてその表と裏が一緒に表されているのがこの絵本だと思います。
盤石な母うさぎの愛情
最終的にこの母子の会話がどこに行き着くのかと言いますと…。子うさぎはこう言います。「僕は人間の子どもになって、お家の中に逃げちゃうよ」それに対して母うさぎはこう言います。「お前が人間の子どもになって、お家に逃げ込んだら、私は、お母さんになって、その子をつかまえて抱きしめますよ」子うさぎは、結局家にいて母さんの子どもでいるのを同じであるという結論に至ります。そこで母うさぎは最後にこう言います。「さあ、坊や人参をおあがり」木の根元のお家の中で子うさぎは母うさぎから人参をもらいます。まだ小さい子どもにとって大事な絵本の要素『安心』が、盤石な母うさぎの愛情によって示されるいい絵本です。
怖いと感じる人もいるかも
見ようによっては、子離れできない母親が子どもを離さない話のようにも思いますね(汗)。でももちろん作者の意図はそこにはないでしょう。今回は結局子うさぎが逃げちゃうことはありませんでしたが、こういう風に「出ようかな」「ちょっと出てみよう」「また戻ってきた」というような事を何度となく繰り返して少しづつ親離れしていくのでしょうし、まだ最初の段階なのでしょうね。そして母うさぎは、出ていっても必ず連れ戻すというような意図はまったくなく冗談半分の返答でしょうし、あくまでもいつまでも子どもを見守る母の愛情を示しているだけなのでしょう。でもそういう補足的な説明や匂わせは一切ないので、怖い母親だと感じたとしてもまったくの間違いではないよなという気もしないではないです。
工夫された絵だけどシュールな面も
絵は一貫して面白い構成になっています。子うさぎのセリフのところでモノクロで描かれた子うさぎの絵が1ページ。それに対する母うさぎの返答でモノクロで描かれた母うさぎの絵が1ページ。そして次に見開き2ページに渡って、母うさぎのセリフ通りの情景が文章無しでフルカラーで描かれます。例えば高い山で岩になっている子うさぎ目指して登山している母うさぎが描かれるわけです。頭で想像していた世界がパッと眼の前に現れるわけで、思わず見入ってしまいます。ただ、美しく描きこれた絵なのですが、若干ファンタジー色が強くてシュールに見えてしまう人もいるかと思います。私がそうでした。子うさぎが鳥になる場面では、うさぎに羽が生えて飛んでるし、止まろうとしている木は母うさぎの形をしています。これがコミカルな絵ならばそうでもないと思いますが、リアルな調子の絵なので、特に敏感な子どもは奇異な印象を持ってしまうかも知れませんね。子どもによるでしょうけど。因みにこのカラーのページでは、どこに子うさぎがいてどこに母うさぎがいるのか、探すという楽しみ方もできると思います。
すごく古い絵本
本書の原書は1942年にアメリカで出版されています。なんと古い!でみ未だに普通に購入可能。ずっと愛されて残ってきた絵本なんですね。
出版社のサイトで調べてみると、この絵本の対象年齢は『2・3歳から』ということになっているようです。私は2歳にはちょっと早いような気がして『3歳から』としてみました。漁師とか登山家とか新しい概念が色々出てきてあまり小さい子どもには若干とっつきにくいような気がしたからです。
この絵本のように母と子どもが対話をするというシチュエーションの絵本を他にもご紹介しています。 → 『いいこってどんなこ』
この絵本とはほとんど関係ないんですけど、母と子のコミュニケーションという意味で超おすすめの漫画があります。近々この漫画もご紹介しようと思っています。この絵本の作者さんは子どもの気持ちを理解できる才能がある人だなと感じましたが、この漫画の作者さんもなかなか。育児中のお父さんお母さんに読んでいただきたいです。
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