作 島田ゆか
絵 同上
発行 文溪堂
初版 1999/2/
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 32
発行部数 103万部(2019ミリオンぶっく)
オススメ度 B
今日はいつも朝寝坊のケロちゃん(カエル)が早起きして家事をやったり朝食を作ったり。それはなんでかと言うと、月に一度のお買い物の日だから張り切ってるんです。
バム(犬)とケロ、そして他のお友達(鳥やウサギやモグラなど)を乗せて車で出かけます。
にぎやかな市場に到着しました。
まずはケロちゃんに新しいチョッキを作るための生地を買います。
次は八百屋さん。この八百屋さん何故か商品にかじった後がついたものがあるよ。
その次はハムスターの不思議なお店。ハムスターが一匹いるだけで商品が何もない。どういうこと?
お腹が空いたのでここでお昼にします。みんな好きなものを買ってきて一緒に食べます。
ご飯を食べたら、今度は『ゆかいなとびら』という不思議なお店に。お店の中に沢山あるとびらには、それぞれお楽しみ商品が隠されているのです。
最後に骨董品屋さんで好きなものを一つづつ買います。ケロちゃんはどうしても凸凹のフライパンが欲しくてたまりません。バムはさっき買った商品の一部を返品してお金を工面し、そのフライパンを買います。
お家に帰ってきて、買ったものを広げて見ている内にみんな疲れて眠ってしまいました。
翌朝また早起きしたケロちゃんがあのフライパンで作ったものとは…
この絵本は絶対に、表紙を見てピンと来なくてスルーしてる人、多いと思います。実は私も今までは…
バムとケロはあんまり見た目がかわいくないんです。サンリオとかのキャラクターを見慣れた日本人にはぱっと見で惹かれるものが足りないかもしれません。(人となりを知るとかわいくなってくるんですけどね。)それと表紙を見ると安易なキャラクターものかなという雰囲気があるんです。表紙を見ただけどでもう「ありがちな薄っぺらいストーリーだろ」とか思いがち。でも!第一印象だけで判断すると間違いますよ。確かにストーリーは凝ったものではないのですが、実はこの絵本、きめ細かく緻密に設計された、何度も何度も読み返して楽しめる絵本なのです。
この絵本のお話はただ買い物をして帰ってくるだけなので、ストーリーを楽しむというよりも場面ごとに細かく用意された仕掛けを楽しむものだと思います。と言っても本作はページに穴が空いていたりページの中にさらにめくる部分があったりするいわゆる仕掛け絵本ではありません。絵の中に子どもが喜びそうな仕掛けが含まれているのです。その仕掛けが楽しいし、また仕掛けを見つけることもまた楽しいです。子どもの好奇心を思い切り揺さぶってくれる絵本なのです。
その点で一番の山はどこかと言ったら、『ゆかいなとびら』のところでしょう。ここはこんなお店です。
お店の中の壁一面にカラフルで色んな形の扉がいっぱいついています。その扉を開けると、それぞれに意外な、しかもあんまり役に立ちそうもない商品が一つづつ入っているのです。最初に開けた扉には変な形の帽子が、次の扉には頭につける飛行機のおもちゃ。その後もこれを買ってどうすんのよというレベルの商品が現れます。結局全部買うんですけどね(笑)。これなんかもうお店自体が子どもの好きなガチャガチャみたいなものですよ。これだけでも読者の子どもは面白がるでしょう。
そしてこの場面には、何の説明もされていない仕掛けが絵の中にいくつか隠されています。その一つは…
扉の形をよくよく見てみると、実は最初の扉はバムの顔の形、次の扉はケロの顔の形になっているんです。さらっと見てると気づかずに素通りしちゃうかも知れません。そしてどうやら買った商品はそれぞれその扉の形が示すキャラクターが身につけるためのもののようです。お店を出た時にはいつの間にかバムとケロが商品を身に着けています。でも文章にも絵にも、そういう事の説明は一切ないので一度読んだだけではこれらの事にまったく気づかない可能性もあります。そして再読した時にあっ!と気づく事になるかも知れません。
他にこんな仕掛けもあります。
実は店の入り口も仕掛けがあって、よく見ると普通の入り口の扉の他に、下の方にとっても小さい扉があと2つあるんです。小さいお客さんもいるのでそんな方用に用意されているんですね。これもよく見ないと見逃しそうです。
実はまだ他にも仕掛けはあります。これ以外は実際にこの絵本をお手にとって探してみてください。そしてそれぞれの仕掛けはすぐには気づきにくいものも多いです。気づかずに通り過ぎても問題ないですし、発見すればお子さんは大いに喜ぶことでしょう。また、こういう構成の絵本なんだと気づいて色々探し出すと、お子さんの頭の中はぐるぐると勢いよく回転しだすと思いますよ。好奇心はお子さんの頭を育てる最大の栄養素ですもん。
その他にも遊び心に溢れたユーモアのある仕掛けが数多く出てきます。それぞれはやっぱり大した意味はないんです。ナンセンスなんです。でも面白くてついつい見入ってしまうんです。
この絵本の絵は隅々まで細かく描き込まれてるんですけど、よーく見ていくと絵の中に小さなストーリーがいくつも潜んでいるのに気づくと思います。これまた仕掛けなんです。絵を描く前に作者さんは相当に内容を練り込んだのでしょうね。一度や二度読んだだけでは、読者はすべてを拾う事はできないでしょう。特に小さなキャラクターを目で追ってみてください。色んな発見ができると思いますよ。その他に作者の他の作品に登場するキャラクターや関連した内容が描かれていたりもします。他の作品を知れば知るほど本作も楽しみが広がるようになっています。
市場にはお店の商品が細かく描き込まれていて、お買い物の楽しさが伝わってきます。大人でも絵を見ていると、あっあれいいな!これ食べたい!なんて思うかも。お子さんもお買い物の楽しさを知ることになるかも知れませんね。でも現実の買い物でバムとケロみたいに必要もないものをいっぱい買うわけにはいかないよなぁ。ケロなんか食べきれないほどドーナツ買ってるし。この絵本の中で買い物を楽しむ分にはいいけど、実際にお子さんと買い物に行くときはお気をつけください(笑)
主人公であるバムとケロはとっても仲がいいのですが、ケロは子どもらしく自分の気持ちに正直で自由奔放なタイプ。お子さんと似てるところを見つけるかも。バムは優しくてケロよりはちょっと大人なところがあります。これがいいコンビなんです。
登場するキャラクターはすべて動物(爬虫類も)で色んな種類が登場します。そして体のサイズがマチマチ。『ゆかいなとびら』のゾウさん店主が一番大きくて、一番小さいキャラクターになるとバムの手のひらに収まる位の大きさです。そして市場のお店では、例えばやかんならバムが使う位の大きさのやかんから、小さなネズミが使う位の小さなやかんまで売っています。それぞれがこの世界の立派な住人なんですね。この世界観は漫画『Dr.スランプ』に似ているなと私は思いました。『Dr.スランプ』の舞台のペンギン村でも普通の人間だけじゃなくて、動物やら宇宙人みたいのやらがいて普通に共生していました。この地球だっていろんな人種やいろんな種がいます。できるだけ仲良くやっていきたいものですね。
文章は絵を補足するほんの短いものばかりです。文章だけを追っていくとペースが早くなって絵を楽しめません。寄り道、脱線、上等!。読み聞かせと言うよりも親子で一緒に見るような感じで、ペースは真剣に見入ってるであろうお子さんに合わせましょう。じっくりひとつひとつの絵を味わうようにゆっくり見ていってくださいね。
バムとケロのシリーズはまだそんなに歴史のある絵本ではないのですが、2019年のミリオンぶっくには2作品がリストアップされています。本書ともうひとつは『バムとケロのさむいあさ』です。1番売れてるのが4作目である本書の『おかいもの』。2番目に売れてるのが3作目である『さむいあさ』です。『おかいもの』から読んでも差し支えないのですが、それ以前の作品から続いた小さなエピソードも若干含まれるので、前の作品を読んだらまたこの『おかいもの』を見直してみると新たな発見があるかと思います。因みに作品の順番としては、『にちようび』『そらのたび』『さむいあさ』『おかいもの』『もりのこや』となります。これまでのミリオンぶっくは長い時間をかけて徐々に部数を伸ばしてきたものが多いのですが、このシリーズに関しては急激に読者を伸ばしているのだろうと思われます。
このシリーズは標準サイズの絵本の他に、小型絵本、大型絵本もあります。小型絵本は132×168mm、標準絵本は216×281mm、大型絵本は305×400mm。小型絵本は持ち運びによく、絵の細かい部分を見るにはちょっと小さいかも。大型絵本はかなり高額です。
ケロちゃんが作ったものとは、ケロちゃんの顔の模様がはいったパンケーキでした。みんな喜んでいただきます。フライパンが凸凹に見えたのはケロちゃんの顔の模様だったんですね。このパンケーキ、食べたい!と思う読者の子は多いことでしょう。探してみたらこのフライパン、売ってるんです。ただ絵本に出てくるフライパンだと4つの違った表情の顔が入った模様になっているのですが、この売ってるフライパンは真ん中に大きい顔一つだけなので、そこだけちょっと違います。
絵 同上
発行 文溪堂
初版 1999/2/
対象年齢 3歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 32
発行部数 103万部(2019ミリオンぶっく)
オススメ度 B
バムとケロのおかいもの のあらすじ・内容
今日はいつも朝寝坊のケロちゃん(カエル)が早起きして家事をやったり朝食を作ったり。それはなんでかと言うと、月に一度のお買い物の日だから張り切ってるんです。
バム(犬)とケロ、そして他のお友達(鳥やウサギやモグラなど)を乗せて車で出かけます。
にぎやかな市場に到着しました。
まずはケロちゃんに新しいチョッキを作るための生地を買います。
次は八百屋さん。この八百屋さん何故か商品にかじった後がついたものがあるよ。
その次はハムスターの不思議なお店。ハムスターが一匹いるだけで商品が何もない。どういうこと?
お腹が空いたのでここでお昼にします。みんな好きなものを買ってきて一緒に食べます。
ご飯を食べたら、今度は『ゆかいなとびら』という不思議なお店に。お店の中に沢山あるとびらには、それぞれお楽しみ商品が隠されているのです。
最後に骨董品屋さんで好きなものを一つづつ買います。ケロちゃんはどうしても凸凹のフライパンが欲しくてたまりません。バムはさっき買った商品の一部を返品してお金を工面し、そのフライパンを買います。
お家に帰ってきて、買ったものを広げて見ている内にみんな疲れて眠ってしまいました。
翌朝また早起きしたケロちゃんがあのフライパンで作ったものとは…
バムとケロのおかいもの の解説・感想
この絵本は表紙だけで判断してはいけません
この絵本は絶対に、表紙を見てピンと来なくてスルーしてる人、多いと思います。実は私も今までは…
バムとケロはあんまり見た目がかわいくないんです。サンリオとかのキャラクターを見慣れた日本人にはぱっと見で惹かれるものが足りないかもしれません。(人となりを知るとかわいくなってくるんですけどね。)それと表紙を見ると安易なキャラクターものかなという雰囲気があるんです。表紙を見ただけどでもう「ありがちな薄っぺらいストーリーだろ」とか思いがち。でも!第一印象だけで判断すると間違いますよ。確かにストーリーは凝ったものではないのですが、実はこの絵本、きめ細かく緻密に設計された、何度も何度も読み返して楽しめる絵本なのです。
お子さんの好奇心を揺さぶる仕掛けが満載
この絵本のお話はただ買い物をして帰ってくるだけなので、ストーリーを楽しむというよりも場面ごとに細かく用意された仕掛けを楽しむものだと思います。と言っても本作はページに穴が空いていたりページの中にさらにめくる部分があったりするいわゆる仕掛け絵本ではありません。絵の中に子どもが喜びそうな仕掛けが含まれているのです。その仕掛けが楽しいし、また仕掛けを見つけることもまた楽しいです。子どもの好奇心を思い切り揺さぶってくれる絵本なのです。
その点で一番の山はどこかと言ったら、『ゆかいなとびら』のところでしょう。ここはこんなお店です。
お店の中の壁一面にカラフルで色んな形の扉がいっぱいついています。その扉を開けると、それぞれに意外な、しかもあんまり役に立ちそうもない商品が一つづつ入っているのです。最初に開けた扉には変な形の帽子が、次の扉には頭につける飛行機のおもちゃ。その後もこれを買ってどうすんのよというレベルの商品が現れます。結局全部買うんですけどね(笑)。これなんかもうお店自体が子どもの好きなガチャガチャみたいなものですよ。これだけでも読者の子どもは面白がるでしょう。
そしてこの場面には、何の説明もされていない仕掛けが絵の中にいくつか隠されています。その一つは…
扉の形をよくよく見てみると、実は最初の扉はバムの顔の形、次の扉はケロの顔の形になっているんです。さらっと見てると気づかずに素通りしちゃうかも知れません。そしてどうやら買った商品はそれぞれその扉の形が示すキャラクターが身につけるためのもののようです。お店を出た時にはいつの間にかバムとケロが商品を身に着けています。でも文章にも絵にも、そういう事の説明は一切ないので一度読んだだけではこれらの事にまったく気づかない可能性もあります。そして再読した時にあっ!と気づく事になるかも知れません。
他にこんな仕掛けもあります。
実は店の入り口も仕掛けがあって、よく見ると普通の入り口の扉の他に、下の方にとっても小さい扉があと2つあるんです。小さいお客さんもいるのでそんな方用に用意されているんですね。これもよく見ないと見逃しそうです。
実はまだ他にも仕掛けはあります。これ以外は実際にこの絵本をお手にとって探してみてください。そしてそれぞれの仕掛けはすぐには気づきにくいものも多いです。気づかずに通り過ぎても問題ないですし、発見すればお子さんは大いに喜ぶことでしょう。また、こういう構成の絵本なんだと気づいて色々探し出すと、お子さんの頭の中はぐるぐると勢いよく回転しだすと思いますよ。好奇心はお子さんの頭を育てる最大の栄養素ですもん。
その他にも遊び心に溢れたユーモアのある仕掛けが数多く出てきます。それぞれはやっぱり大した意味はないんです。ナンセンスなんです。でも面白くてついつい見入ってしまうんです。
隠れたミニストーリーがあちこちに
この絵本の絵は隅々まで細かく描き込まれてるんですけど、よーく見ていくと絵の中に小さなストーリーがいくつも潜んでいるのに気づくと思います。これまた仕掛けなんです。絵を描く前に作者さんは相当に内容を練り込んだのでしょうね。一度や二度読んだだけでは、読者はすべてを拾う事はできないでしょう。特に小さなキャラクターを目で追ってみてください。色んな発見ができると思いますよ。その他に作者の他の作品に登場するキャラクターや関連した内容が描かれていたりもします。他の作品を知れば知るほど本作も楽しみが広がるようになっています。
お店の品々を見るのも楽しい
市場にはお店の商品が細かく描き込まれていて、お買い物の楽しさが伝わってきます。大人でも絵を見ていると、あっあれいいな!これ食べたい!なんて思うかも。お子さんもお買い物の楽しさを知ることになるかも知れませんね。でも現実の買い物でバムとケロみたいに必要もないものをいっぱい買うわけにはいかないよなぁ。ケロなんか食べきれないほどドーナツ買ってるし。この絵本の中で買い物を楽しむ分にはいいけど、実際にお子さんと買い物に行くときはお気をつけください(笑)
微笑ましい主人公コンビ
主人公であるバムとケロはとっても仲がいいのですが、ケロは子どもらしく自分の気持ちに正直で自由奔放なタイプ。お子さんと似てるところを見つけるかも。バムは優しくてケロよりはちょっと大人なところがあります。これがいいコンビなんです。
世界観がいい
登場するキャラクターはすべて動物(爬虫類も)で色んな種類が登場します。そして体のサイズがマチマチ。『ゆかいなとびら』のゾウさん店主が一番大きくて、一番小さいキャラクターになるとバムの手のひらに収まる位の大きさです。そして市場のお店では、例えばやかんならバムが使う位の大きさのやかんから、小さなネズミが使う位の小さなやかんまで売っています。それぞれがこの世界の立派な住人なんですね。この世界観は漫画『Dr.スランプ』に似ているなと私は思いました。『Dr.スランプ』の舞台のペンギン村でも普通の人間だけじゃなくて、動物やら宇宙人みたいのやらがいて普通に共生していました。この地球だっていろんな人種やいろんな種がいます。できるだけ仲良くやっていきたいものですね。
読み聞かせには注意を
文章は絵を補足するほんの短いものばかりです。文章だけを追っていくとペースが早くなって絵を楽しめません。寄り道、脱線、上等!。読み聞かせと言うよりも親子で一緒に見るような感じで、ペースは真剣に見入ってるであろうお子さんに合わせましょう。じっくりひとつひとつの絵を味わうようにゆっくり見ていってくださいね。
人気シリーズです
バムとケロのシリーズはまだそんなに歴史のある絵本ではないのですが、2019年のミリオンぶっくには2作品がリストアップされています。本書ともうひとつは『バムとケロのさむいあさ』です。1番売れてるのが4作目である本書の『おかいもの』。2番目に売れてるのが3作目である『さむいあさ』です。『おかいもの』から読んでも差し支えないのですが、それ以前の作品から続いた小さなエピソードも若干含まれるので、前の作品を読んだらまたこの『おかいもの』を見直してみると新たな発見があるかと思います。因みに作品の順番としては、『にちようび』『そらのたび』『さむいあさ』『おかいもの』『もりのこや』となります。これまでのミリオンぶっくは長い時間をかけて徐々に部数を伸ばしてきたものが多いのですが、このシリーズに関しては急激に読者を伸ばしているのだろうと思われます。
このシリーズは標準サイズの絵本の他に、小型絵本、大型絵本もあります。小型絵本は132×168mm、標準絵本は216×281mm、大型絵本は305×400mm。小型絵本は持ち運びによく、絵の細かい部分を見るにはちょっと小さいかも。大型絵本はかなり高額です。
ケロちゃんが作ったものとは
ケロちゃんが作ったものとは、ケロちゃんの顔の模様がはいったパンケーキでした。みんな喜んでいただきます。フライパンが凸凹に見えたのはケロちゃんの顔の模様だったんですね。このパンケーキ、食べたい!と思う読者の子は多いことでしょう。探してみたらこのフライパン、売ってるんです。ただ絵本に出てくるフライパンだと4つの違った表情の顔が入った模様になっているのですが、この売ってるフライパンは真ん中に大きい顔一つだけなので、そこだけちょっと違います。
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