作 シゲタサヤカ
発行 えほんの杜
初版 2012/1/17
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

オニじゃないよおにぎりだよ のあらすじ・内容



オニおにぎりが大好物で、いつもおにぎりを食べています。

3匹のオニが山でおにぎりを食べていると、たまたま山に登ってきた人間がそれを見かけて大慌てで逃げていきました。オニは自分たちが怖がられたとは知らず、オバケでも見たのか?という風にしか思いませんでした。

その後逃げた人間たちが慌てて落としていったおにぎりを見つけます。オニたちは試しに食べてみましたが、だいぶ時間がたっているのでパサパサでしかも嫌な匂いまでします。

こんなまずいおにぎりを食べている人間がかわいそう、おいしいおにぎりを食べさせてあげようと、3匹はおにぎりをたくさん作って人間の街へ下りていきました。ところが人間たちは驚いてみんな逃げてしまい、おにぎりを食べさせるどころではありません。

3匹は、突然押しかけたから人間たちは驚いたのだろう、今から行くよ!と予告していけばいいんじゃないかと考えました。再度おにぎりを作り、太鼓を叩いて「今から行くよ!」と大きな声で知らせながら、山を下りました。

ところが街へ着いてみると人っ子一人いません。みんな隠れてしまったのです。街角にはオニに注意するよう書かれたポスターまでありました。「人間はツノなんて生えてないもんな」 さすがにオニたちは自分たちが怖がられていることを悟りました。

そしてオニたちはまた考えます。

オニじゃないよおにぎりだよ の解説・感想



独特のユーモアがある楽しい絵本



オニ達の勘違いが楽しいコメディー絵本です。独特のB級な雰囲気がいいんです。上の表紙を見ていただくだけでも、その空気が伝わってくると思います。オニ達の表情、前面におにぎりがドーンと出てくるダサい構図、「かぶりつくうまさ! くせになるおもしろさ!」とか言う胡散臭い雰囲気のコピー、どれをとっても味があります。説教臭い雰囲気がまったくなくて構えてないので、子どもたちも安心して絵本の中に入っていけると思うんです。

読み終えた時あなたはこのタイトルに納得する



『オニじゃないよおにぎりだよ』というタイトル、意味分かんないし、あまりにも低レベルなダジャレだと思いませんでした? でもちゃんと意味があるんです。最後まで読んでいただければ意味がわかるようになっています。まるで小説『いま、会いにゆきます (小学館文庫) [ 市川拓司 ]』みたいに最後にタイトルに納得することでしょう(笑) このオチは想像できなかったなぁ。

オニの勘違いが一番のツボ



この絵本を子どもが楽しむ一番のポイントは、人間がオニを怖がっていることを当のオニ達がなかなか理解できずに、勘違いして失敗するところにあります。本来怖い存在のはずのオニがちょっとお間抜けなところが面白いんです。読者の子どもたちは、自分でもわかる事にオニが気づかないことが楽しいでしょう。自分はわかっているよ、と読み聞かせる親御さんに得意げに解説してくれるかも知れませんね。オニは一種大人の象徴でもあり、読者の子どもはそれに優越することに一種のカタルシスを感じるとともに、身近な親しみを感じるんじゃないかな。

遊べる仕掛けもあります



表紙カバーは遊びに使えるようにデザインされています。

おにぎりになろう:大きく描かれたおにぎりの海苔の部分を切り取って、おにぎりのお面のようにして使えます。読者がおにぎりに変身できるんです。

おにぎりをつくろう:海苔の巻いていないおにぎりの絵がたくさん。カットした海苔の絵もたくさん。これらを切って組み合わせておにぎりを完成させる遊びができます。よく見るとおにぎりの具は色んな種類があるみたいです。

帯の部分にはオニの好きなおにぎりの具が19種類もあげられていました。「どれが食べたいかな」「これ作ってー!」なんて、会話が生まれそうです。(ただ帯のデザインはよく変わるのでこの絵本を購入された時に同じ帯の内容とは限りませんのでご注意を。)本文中に描かれるおにぎりもよく見ると種類が色々あるんです。これは何のおにぎりかな?なんて推理してみても面白いでしょう。

オニの姿勢は見習うべきものがある



オニ達が失敗しながらも、色々と考えを巡らして、再チャレンジを繰り返すところはいいと思います。ちょっと位うまくいかなくてもあきらめないでチャレンジする姿勢、対策を自分の頭で考えること、これらは絵本を楽しみながらいつの間にか読者の子どもの心に残るでしょう。

ユーモアってすごい



気のいいオニでもオニはオニであり、なかなか人間に理解されないという状況は他の絵本『島ひきおに』『おにたのぼうし』の中でも現れます。いずれも最終的にオニが人間の理解を得るということはないのですが、この『オニじゃないよおにぎりだよ』は違います。ラストは秘密ですけどハッピーエンドと言っていいです。真面目に誠心誠意取り組んだ『島ひきおに』『おにたのぼうし』のオニ達がなし得なかった事をこのちょっととぼけたオニ達が成し遂げるのです。まあオニが意図したこととはちょっとずれてるんですけど。でもユーモアって絶大な力があるな、と思いますねこれは。